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副業/兼業は本当にトレンドか?データから見る、副業/兼業の“現在地”

2022/08/23 Tuesday
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リモートワークとともに、働き方をめぐって注目度が高い「副業/兼業」。周囲をみても副業や兼業をしている人が増え、当たり前になりつつあると感じている人は多いのではないでしょうか。 なかには、「副業/兼業が流行っているけど、自分はやっていなくて大丈夫かな?」と不安に思っている人もいるかもしれません。今回は、厚生労働省などの調査をもとに副業/兼業の“現在地”を調べてみました。

どんな人が副業/兼業をしているのか

副業/兼業の目的は、人によっていろいろ考えられます。収入を増やしたい人もいれば、スキルアップや新しい経験を積むことを目的としている人もいるでしょう。企業目線では、採用する前に業務やチームとの相性を見るために副業を活用しているケースも見られます。

メディアやSNSでは副業/兼業を新しい働き方やトレンドのように伝える場面も見かけますが、実際に副業/兼業している人はどのくらいいるのでしょうか。

内閣府が2019年に出した「政策課題分析シリ-ズ17 日本のフリーランスについて」によると、フリーランスの働き方をする人のなかで副業している人は約163万人いるそうです。

では、どんな人たちが副業/兼業しているのでしょうか。

厚生労働省労働基準局提出資料の「副業・兼業の現状①」によると、以下のように総括されています。

  • 副業をしている者を本業の所得階層別にみると、本業の所得が299万円以下の階層で全体の約3分の2を占めている。
  • 雇用者総数に対する副業をしている者の割合を本業の所得階層別にみると、本業の所得が199万円以下の階層と1000万円以上の階層で副業をしている者の割合が比較的高い。

副業をする理由の1位・2位は「お金」

また、第132回 労働政策審議会安全衛生分科会(2020年8月19日)の「副業・兼業に係る実態把握の内容等について」によると、15万9355人を有効回答としたアンケートで「副業をしている理由」の第1位は「収入を増やしたいから」(56.5%)、第2位は「1つの仕事だけでは収入が少なすぎて、生活自体ができないから」(39.7%)という結果に。

本業の就業形態別に「副業をしている理由」を調査した結果では、「自分で活躍できる場を広げたいから」と回答したのは本業が会社役員である人が最も多い結果(30.9%)となりました。

1週間あたりの副業の総実労働時間は、「10時間以上20時間未満」(25.6%)、「5時間以上10時間未満」(24.3%)、「5時間未満」(23.0%)の順に回答の割合が高いという結果が出ています。

副業/兼業のイメージと実態の乖離

ここまでの結果を見て、どのように感じたでしょう?メディアやSNSなどで日々見かける副業/兼業のイメージとは違った部分もあったのではないでしょうか。

副業/兼業している人は、163万人程度という結果でした。この数字から一概に多い少ないを判断することはできませんが、厚生労働省の発表によると派遣社員として働いている人は約169万人と言われており、それと同等ということになります。そういう意味では、副業/兼業は珍しい選択肢ではないと言えそうです。

しかし、副業をする目的としては「収入を増やしたい」「本業の年収だけでは生活できない」という金銭的な理由が/中心になっていることも見逃せません。少し前の言葉で言うと「掛け持ち」のようなイメージで複数仕事をしている人が多いということです。経験やスキルアップを目的に副業/兼業している人は、イメージしているよりも少ないのかもしれません。

実際に調べてみると、副業/兼業の世間のイメージと実態には乖離もあることがわかりました。ただ、副業/兼業はうまく活用すればリスクなしに新しい仕事にチャレンジできたり、本業とは別の人間関係を構築できたりなど、メリットもたくさんあります。働き手と企業の双方にメリットを生み出すためにも、労働時間や労働環境をいかに工夫していけるかが今後のポイントになりそうです。

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石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA

働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。