work 働き方

実は50年前からあった!?リモートワークの変遷と今後

2022/08/30 Tuesday
この記事をシェア: xシェア

コロナ禍により、国内企業におけるリモートワークは急速に広がりました。世の中ではリモートワークは「画期的」「先進的」な働き方として捉えられることが少なくありませんが、そもそもリモートワークはいつから始まった働き方なのでしょうか?そして、コロナを経てどのように変化するのでしょうか?
今回の記事では、リモートワークの変遷やコロナ前後の変化についてお伝えします。

リモートワーク・テレワーク・在宅勤務…言い方はさまざま

コロナ禍で急速に広まった「リモートワーク(Remotework)」という言葉ですが、もともとはRemote(遠隔)とWork(働く)を組み合わせた造語だと言われています。「テレワーク(Telework)とは何が違うの?」と思う方もいるかもしれませんが、世間での使われ方では大きな違いはありません。他にも、同様の意味で「モバイルワーク(Mobilework)」という言葉もあるようです。

リモートワークやテレワークは、ビジネスの現場では「オフィス以外の場所で働くこと」の意味で使われることが一般的ですが、厚生労働省では「テレワーク」は「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と、私たちのイメージよりも幅広く定義されています。

加えて、「在宅勤務」という言葉を目にすることも増えました。リモートワーク・テレワークのなかでも、働く場所を「自宅」に絞ったのがこの言葉です。リモートワークやテレワークは、自宅の他にコワーキングスペースやカフェなどオフィス以外のさまざまな場所で仕事をするケースが想定されます。

リモートワークはいつから始まった?コロナによる変化とは

リモートワークやテレワークのような働き方は、いつから始まったのでしょうか?

リモートワーク・テレワークは「新しい働き方」のように取り上げられることが多いですが、実はおよそ50年前から言葉や働き方として存在しています。テレワークという言葉は1970年代にアメリカで生まれたと言われ、日本では1980年代後半に、サテライトオフィスを用いたテレワーク導入企業が増加したそうです。当時の日本はバブル期で、地価が高騰していて都心部に大きなオフィスを構えるのが難しかったこと、人材確保のため働きやすさをアピールする狙いがあったことが、背景として挙げられます。

しかし、私たちがリモートワーク・テレワークを身近な言葉に感じるようになったのは、コロナがきっかけでしょう。2020年に国内でも感染が始まり、緊急事態宣言が発令され、メディアやSNSなどでリモートワーク・テレワークという言葉が急速に広まっていきました。

コロナの前後で、日本企業のリモートワーク事情にはどのような変化があったのでしょうか。東京商工リサーチの調査をもとにした総務省の発表によると、1回目の緊急事態宣言時に17.6%から56.4%へと大幅に上昇。宣言解除後には低下したものの、2回目の緊急事態宣言時には38.4%に再上昇しました。その後も上下はありながらも、2021年10月時点で全国のテレワーク実施率は32.2%となっており(内閣府による調査)、少なくとも3割は定着してきていると言えるでしょう。

では、海外のリモートワークはどれほど普及しているのでしょうか。2020年7月に実施された野村総合研究所のアンケート調査によると、日本・アメリカ・イギリス・ドイツ・イタリア・スウェーデン・中国・韓国でテレワークの利用率が大幅に上昇していることがわかりました。

「新型コロナ以前からテレワークをしたことがあり、感染拡大後もテレワークをした」および「新型コロナ以前にテレワークをしたことがなかったが、今回初めてテレワークをした」と回答した人の比率は、中国(都市部)の75%がトップで、アメリカ・イタリアの61%が続いています。日本は31%で、8ヵ国の中では最も低い結果でした。日本でリモートワーク導入が進んだといっても、世界的に見ると普及したとはまだまだ言えないでしょう(※)。

※出展元資料では調査結果の傾向について、各国のロックダウン政策の厳しさと関係があると考察しています

コロナ後のリモートワークはどうなる?

コロナをきっかけに導入が進んだリモートワーク。

緊急事態宣言などコロナの状況に合わせて一時的に取り入れるパターン、相性の良い一部の職種のみを対象とするパターン、週のなかでリモートワークとオフィス勤務を組み合わせる「ハイブリット型」のパターン、『Alternative Work』を運営する株式会社キャスターのように全メンバーが一度も出社することのない「フルリモートワーク」のパターンなど、導入の仕方はさまざまあります。

いずれのパターンでリモートワークを経験したとしても、企業は人材確保やオフィス賃料のコストカットなどの面でメリットを、働き手は通勤がないことや住む場所で仕事を制限されないことのメリットを少なからず実感できたことでしょう。

しかし、リモートワークがおよそ50年前から言葉として存在し、物理的かつ合理的な理由で活用されてきたことを考えると、リモートワークはコロナの有無に関わらず当たり前の選択肢になり得ると言えます。

むしろ、コロナというある意味で強制的な理由がなくなってからこそが、企業と働き手の双方がリモートワークの本当の意義や可能性を考えるスタートラインなのかもしれません。

この記事をシェア: xシェア

ヒガキユウカYUUKA HIGAKI

フリーの編集者・ライター。求人広告制作、編集プロダクションを経て独立。主に人事・採用領域で導入事例取材、キャリアストーリー取材をしています。もう一つの専門はボカロ・バーチャルYouTuberなどのネットカルチャー。Twitter:@hi_ko1208