リモートワークの有無に関わらず、多くの職場で欠かせないコミュニケーション手段となっているチャット。ここ数年でビジネスチャットツールを導入したという企業も多いでしょう。しかし、組織でチャットを上手く使いこなすには、対面での会話やメールとは違ったマナーやルールが必要です。組織の“チャット力”を育む心構えを具体的にご紹介します。
チャットツールのメリットと注意点
モニタスが全国の会社員(20~64歳の男女2836名)を対象に実施した調査によると、「何らかのビジネスチャットツールを利用した経験がある」と回答した人は40.1%、現在利用中であると回答した人は38.6%。よく使われているチャットツールは「Slack」「Chatwork」「Microsoft Teams」「LINEWORKS」の4つで、従業員数1000名以上の企業では「Microsoft Teams」(21.4%)、100名未満の企業では「Chatwork」(4.7%)、「Slack」(3.9%)が多く利用されているようです。
多くの人がビジネスでチャットツールを利用している現状ですが、チャットには以下のようなメリットと注意点があります。
<メリット>
①手軽さ、便利さ
会話のように直感的にやりとりできるのはチャットの良いところです。パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットからも簡単にメッセージを送ることができるので、さまざまな職種に馴染みます。
②情報の一元化・共有がしやすい
プロジェクトごとのチームや、特定のテーマを扱うグループチャンネルを作ることで、情報の一元化・共有をスムーズに行えます。資料の共有などもしやすく、履歴が残るのでやりとりを見返しやすいのもポイントです。
③業務効率が上がる
リアルでの会話や電話と異なり、チャットは非同期であることが特徴。複数人で会話しているようにコミュニケーションをとれるので、上手く活用すれば会議を設定することなく、組織の意思決定や業務を進められます。
<注意点>
①認識・理解度に差がある
チャットは、対面とも電話ともメールとも異なるツール。誰でも気軽に利用できるとはいえ、人によって認識や理解度には大きな差があります。組織に導入して初日から使いこなすのは難しく、ある程度使用して慣れる期間が必要です。
②ルールの整備が必須
組織でチャットを活用するにはルール化がマスト。通知(メンション)、時間帯(勤怠管理)などのルールが整備されていないと、24時間365日チャットを気にかけてしまう状態になりかねないリスクがあります。
③複数チャットの管理に注意
社外とのやりとりが多い場合や副業をしている場合などは、複数のチャットツールを使うケースも。大事な情報の見落としや送信先のミスなどには注意しましょう。
意識すべき、“本当の”チャットマナー3つ
ビジネス以前にプライベートのLINEでのやりとりなど、チャットをもともと身近に感じていた人も多いかもしれません。でも、だからこそ、無意識のうちにそれぞれが自分流のチャットのマナーや常識を作り上げてしまっている場合があります。プライベートであれば使い方は自由ですが、組織で活用するには改めてチャットの認識を統一する必要があります。
意外と知られていない、組織でチャットを活用する上での“本当の”マナーを以下に3つ挙げます。
①あえて空気は読まないこと
日々の会話のなかでは「空気を読む」という行為は頻繁に行われるかもしれませんが、実はチャットの場合はあえて「空気を読まない」心構えが必要です。チャットは相手の姿や表情、ジェスチャーなど視覚的な情報が制限されたツール。「スタンプがついていない……もしかして怒っているのかも?」「句読点がないのはどういうこと?」「返信が遅いのはどうして?」などと空気を読もうとしてしまうと勝手な想像が膨らんで疑心暗鬼に陥ってしまいます。チャットではあえて空気を読まず、文面のままフラットに受け取るようにしましょう。
②やりとりの回数を減らそうとしないこと
メールなどの場合、やりとりの回数を減らすために一度の送信で多くの内容を伝えようとすることがありますが、チャットの場合はやりとりを重ねることを前提としましょう。チャットは“テキストでの会話”です。会話であれば、相手の発言に対して「それって、どういうこと?」「こういう認識で合ってますか?」などとキャッチボールを行うのは当たり前。相手の伝えたいことを1回の発言ですべて理解する必要はありませんし、自分の考えを1回で伝えようと長文を打つ必要もありません。無駄に長文なチャットは、チャットのメリットでもある手軽さが失われ、分かりづらいことから誤解にも繋がりやすくなります。
③即レスを前提にしないこと
チャットは、異なる場所で各々のタイミングで会話をする“非同期のコミュニケーションツール”です。先ほど“チャットは会話”だと伝えましたが、メンバー全員が同じ時間に同じ場所にいるオフィス環境とは根本的に異なります。オフィスでは「すみません〜」と声をかければ何かしらのリアクションがすぐに返ってくるのに対して、チャットは自分にとって都合のいいタイミングで相手が返事をしてくれるとは限りません。「即レス」は時に「仕事がデキる人」として捉えられることがありますが、チャットで即レスを求めてしまうと常に画面に張りついていなければならず、他の業務が一向に進みません。返事がすぐにはこないことを前提に、余裕をもったやりとりを心がけましょう。
チャットは、対面のコミュニケーションとはもちろん異なりますし、メールや電話の代替手段でもありません。全くの新しいツールとして、常識やマナーをゼロから見直し、組織の中で共通認識を擦り合わせる必要があります。
本メディア『Alternative Work』を運営する株式会社キャスターでは、800名以上がスムーズにリモートワークをできるよう「Slack」を活用しています。
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さくら もえMOE SAKURA
出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。