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リモートワークにおける新人の「お悩みあるある」5選と解決策

2023/04/04 Tuesday
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就職や転職などで新しい環境で働き始める人も多い新年度。企業のマネジメント担当にとって、新人とのコミュニケーションは意識して取り組みたいことの1つですが、リモートワークを導入している企業ではどのようなことに気をつけるべきなのでしょうか?

従業員800人以上がフルリモートワークで働く株式会社キャスターでは、新人教育を担当する「HRD(Human Resource Development)」という職種があります。今回は、HRDとして働く小浦幸穂さんに新入社員とのコミュニケーションにおけるコツを教えてもらいました。

CASTER BIZ recruiting

IT系企業を中心に累計500社を超える企業の採用業務を支援する採用代行サービス。採用戦略の立案から、スカウト・エージェント対応などの母集団形成、応募者対応まで一連の採用業務を請け負います。人事担当者の業務を激減させ、採用を“自動化”するサービスです。

リモートでも、求めるコミュニケーションは人それぞれ

通年で中途採用をおこない、毎月新入社員が入社してくるキャスター。フルリモート経営をおこなっているため、日々の業務はもちろん、入社研修やオンボーディングもすべてリモートでおこないます。

企業の採用業務を代行するサービス「 CASTER BIZ recruiting 」の事業部では、8名ほどのメンバーが新入社員の教育担当としてHRDを担っています。

新入社員とのコミュニケーション方法について、HRDの1人である小浦さんは「全員リモートワークの職場でも、求めているコミュニケーションは人それぞれ。これが基本的な考え方です」と言います。

「リモートだからといって、必ずしも対面での会話やウェットなコミュニケーションを避けたい人ばかりではありません。心地よいと感じるコミュニケーションは人それぞれですし、テキストコミュニケーションへの慣れ具合も1人ひとり違います。そのため、コミュニケーションにおいては『全員一律でこれをやっておけばOK』という万能策はありません。

だから、本人にストレートに『どんなコミュニケーションが好きか』『どんな距離感が心地よいと感じるか』を聞いて、それに沿って対応しています。『この人は、きっとこのやり方がいいだろう』と決めつけることはしません。予想で動くと、良かれと思ってやったことが逆効果だった…というミスコミュニケーションにつながる可能性もあるからです」(小浦さん)

キャスターでは、空気を読む(=予想する)ことをしないのが、リモートワークをするうえでのコミュニケーションのコツだと提唱しています。視覚的に相手の雰囲気や表情がわからないテキストでのやりとりはもちろん、対面であったとしても、決めつけずに相手に直接聞いてみることが実は近道かもしれません。

※テキストコミュニケーションのコツは、「ビジネスチャットの“本当の”マナーとは?メリット・デメリットも紹介」の記事をご覧ください。

新人の「お悩みあるある」5選と解決策

コロナ禍でリモートワークは加速したものの、まだリモートワークに慣れていない人や未経験の人が新入社員として入社してくることもあるでしょう。

リモートワークにおいて新入社員が抱きがちな「お悩みあるある」5選とキャスターが実際に行っている解決方法について、小浦さんに教えてもらいました。

1. 同僚・先輩に相談するタイミングがわからない

「みんな忙しそう。ちょっとした困りごとや悩みごとを相談したいけど、いつ声をかけていいのか、タイミングがわからない」というのは新人あるあるな悩み。小浦さんは、この問題の解決策として直接話す時間を意図的に設けています

「前提として、チャットはいつ送ってもOKというのは伝えているのですが、それでも相談しづらいという人はいます。そこで、最初の2、3ヶ月の間は毎日『朝会』と『夕会』を30分ずつ設けて、新入社員とオンラインで1対1で話す場をつくっています。業務が立て込んでいても毎日開催することがポイントで、わからないことや悩みごとはできるだけ早く解決するようにしています。もちろん、コミュニケーションの好みによっては頻度を変えることもあります」(小浦さん)

2. 1人で仕事をしているような孤独感がある

リモートワークが初めての人は、家でひたすらパソコンに向かって作業しているとだんだん孤独感が募ってくるという人もいるかもしれません。対策として、小浦さんの部署では2022年からバーチャルオフィスツール「Gather」を導入しています。もともとキャスターの他部署が「Gather」を導入していて、好評だったことから導入に至ったそう。

「Gather」には各HRDが決めた時間(1日1時間など)にログインし、質問はもちろん雑談もOK。新入社員が気兼ねなく会話できる場所にしています。担当HRD以外とも話せるルールで、複数人でのコミュニケーションに広がるメリットも生まれているそうです。

「『Gather』を使う目的や頻度も人それぞれです。私がいつも心がけているのは、リアルなオフィスとできる限り近い環境にすること。マイクをミュートにして参加すればラジオ的な使い方ができるので、雑音はほしいけれど発言するのは緊張するという人も気軽にログインできます。入りたい人だけ入り、話したい人だけ話す、と複数の選択肢を用意していることがポイントです。たとえ利用率が低い日があっても、根気強く続けて、場を設けておくことが大事だと考えています」(小浦さん)

3. 社内で横のつながりが作りづらい

リモートワークでは、オフィス勤務の時のようにふとしたタイミングで新しいメンバーと話すという環境は生まれづらくなります。社内での横のつながりを作るための対策はどのような工夫がされているのでしょうか?
小浦さんの部署では、週に1度ランダムなメンバーでオンラインランチをする「シャッフルランチ」を実施しています。カジュアルなランチでありながら、しっかりとした運営体制が特徴的です。

「入社時にSlackに投稿してもらう自己紹介文などを見て、共通点がある人同士をピックアップして、ランチの場でつないでいます。たとえばサッカーが好きな人を集めたり、関西出身者を集めたり。共通点がそのまま会話のきっかけになるため、盛り上がりやすいんです。HRDがファシリテーターを務め、トークテーマを提供したり、発言しやすいカジュアルな雰囲気をつくったりしています。簡単な議事録も取り、HRD同士で共有して、その後のコミュニケーションにも役立てています」 (小浦さん)

4. 仕事のモチベーションを維持しづらい

2の「孤独感」ともつながりますが、一人で黙々と仕事をしているとモチベーション維持が難しいという人もいます。この解決策として、小浦さんの部署では、Slack内で「ナイスムーブ」という取り組みをおこなっています。

「日常業務の中でクライアントから感謝されたこと、仕事の成果につながったことなどをSlackで随時シェアする文化を大切にしています。Slackにシェアしたい内容があった時には、『ナイスムーブ』スタンプをつけます。すると、スタンプが押された投稿が自動で収集され『ナイスムーブチャンネル』に共有されて、そこを覗けばみんなの仕事の成果が見える仕組みになっているんです。自分の投稿に対してみんなが反応してくれること、自分の成果を褒めてもらえることを、モチベーションアップにつなげる施策です」(小浦さん)

5. 教育担当者に意見を言いづらい

言いたいことがあっても、教育担当者に直接言うのは憚られるという場面もあるでしょう。キャスターではこれを防ぐため、新入社員とサブマネージャーとの1on1で行う「フォロー面談」も設定しています。

「フォロー面談では、入社前後でのギャップがないか、HRDとの関わり方や仕事の進め方に違和感がないか、今後挑戦したい仕事はどんなものか、などをヒアリングしています。この時、新入社員からHRDへのフィードバックももらいます。直接だと言いづらくても、サブマネージャーになら言えることもあるでしょう。HRDへの率直なコメントをもらって、その後の新人教育に活かしています」(小浦さん)

以上が、リモートワークにおける新入社員とのコミュニケーションのコツと“お悩みあるある”の解決策でした。

新人教育で重要視したい「コミュニケーション」ですが、求める形は人それぞれ。

「予測する、察する」ことをやめて「ストレートに本人に聞いてみる」発想は、リモートワークではもちろん、対面でのコミュニケーションでも活用できそうです。

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さくら もえMOE SAKURA

出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。