多くの管理職が悩むチームマネジメント。
「うまくいくチーム」と「うまくいかないチーム」は、一体何が違うのでしょうか。
「うまくいかないチーム」に共通して見られる2つのサインから、課題と解決策を探ります。
うまくいかないチームに見られる2つの共通点
自分のチームはうまくいっているのかーー日々この悩みを抱えている管理職は、多いのではないでしょうか。
管理職は、チーム内の人間関係に気を配りながら、業績もあげなければなりません。もちろん、メンバーが自走して上手くいっているときはいいですが、いつもそういうわけにもいきません。ついこの間までうまくいっていたチームが調子を落とし、業績を悪化させてしまうことはよくあることでもあります。
私は管理職として数十のチームをマネジメントしてきた他、個人でいくつかのスタートアップや企業の事業推進のコンサルティングをしています。複数のチームを見てきた結果、うまくいかないチームには大きく2つの共通点があることがわかりました。
そして、そうしたチームはたいてい、ある特定の質問に対してうまく答えられません。今回は、うまくいかないチームに共通する特徴について書いていきたいと思います。
うまくいかないチームは「数字」が答えられない
うまくいかないチームの共通点の1つ目は、「数字がない」もしくは「数字で把握していない」ことです。
例えば、A社に「顧客数の増加が鈍化しているので、改善したい」という課題があったとします。そこで、営業やマーケティングの責任者、担当者にヒアリングをしてみます。
「新規の顧客数が足りないということですが、事業計画から逆算すると月に何社必要ですか?」
「毎月何件商談があって、そのうち受注見込みになるのは何件ですか?」
「失注率は何%ですか?また、失注理由ごとの件数の内訳はどうなっていますか?」
このようにいくつか質問を重ねていきます。
すると、うまくいかないチームは目標の売り上げ金額など会社から与えられた数値目標は答えられても、質問が細かい数字に及ぶとだんだん答えられなくなってきます。チームをうまくマネジメントし、成果を安定的に出している人からすると信じられないかもしれませんが、これは珍しくありません。
数字で答えられないということは、自分たちのチームの「現状」を正しく把握できないということです。
「自分たちのチームの何が課題なのか」「営業プロセスの中で以前に比べて改善している箇所はどこなのか」「逆に悪化してしまっている箇所はどこなのか」などがわからないのです。
現状がわからなければ、もちろん課題もわからず、解決策は見つかりません。そのため、そういったチームでは行き当たりばったりの対策を積み重ねていたり、なんとなくの感覚に基づいて毎月仕事をしていたりすることになります。
そうなると、もちろん結果は出づらいです。結果が出ないなかで毎月頑張り続けるのはしんどいので、メンバーの士気も下がり、当然評価も下がるでしょう。
マネジメントをする上で、現状を正しく認識するということは何よりも大事です。そして、「数字」というツールを使わずに現状を正しく認識することはとても難しいことです。
うまくいくチームにするためには、自分たちの仕事においては、誰よりも詳しく、そして誰よりも細かく「数字」で把握できていることが最低条件の1つです。
うまくいかないチームは「責任者」がいない
うまくいかないチームの2つ目の共通点は「責任の所在が曖昧」もしくは「誰が決めたかわからないことが多い」ことです。
少しわかりづらいので再び例を出して説明します。
例えば、B社はマーケティングに課題を抱えていて、その解決策として先月からSNSを使ったマーケティングの施策を始めたとします。
それに対して、「この施策は何が目的なんですか?」「誰が決めたのですか?」「誰がこの施策に責任を持っているのですか?」などと質問してみると、答えられないことがほとんどです。
これは質問した人が責任者を知らないという意味ではありません。部署の責任者に聞いても答えが曖昧だったり、答えられなかったりするのです。つまり、「誰も責任を持っていない」状態です。
極端な例に聞こえるかもしれないですが、うまくいっていないチームのほとんどは責任の所在が曖昧なケース、また意思決定がはっきりせず、ふんわりとしたまま進んでいたりするというケースが非常に多いです。
ここでいう責任とは、「失敗をしたら責任を取れる」という話ではありません。施策をやる際に誰が最終決定をして、誰が施策の実行や改善、計測に責任を持って取り組むのかということです。
責任者が不在もしくは曖昧な状態で進んでいると、施策を辞めることすらもできません。
そうして、誰が決めたかわからないタスクや仕事、ルールが増え、「忙しくなる一方なのに成果が出ない」という状態に繋がってしまいます。だからこそ、「責任者の所在」ははっきりしていないといけません。
実は、このようなケースは採用面接においても非常に多く見られます。
多くの会社の採用面接では、1次面接、2次面接、最終面接と何度かの面接を経て合否が決まります。このプロセスだと、全ての面接官が合格を出した場合のみ採用することになりますが、逆に言えば、誰がこの人を採用することに責任を持つのかが曖昧なシステムでもあります。言い換えれば、誰か特定の一人ではなく、全員で少しずつ責任を分担する仕組みになっているのです。
このように、責任の所在を曖昧にしたまま合議で進めていくのは日本企業特有の文化でもあるのかもしれません。
ただし、チームで成果を残そうとした場合に、責任や意思決定者が曖昧なままだと、新しいチャレンジはしにくく、非効率なルールや仕事があったとしても、それを辞めることさえできなくなります。
今回挙げたうまくいかないチームに共通する2つのサインは、言われてみれば当たり前に思えることかもしれません。でも、その当たり前をしっかりやれているチームはさほど多くありません。
だからこそ、自分たちの仕事をしっかりと「数字で把握」し、「責任の所在をはっきり」させて日々の仕事を行うだけで、他のチームよりも一歩リードすることができ、高い成果を残すことに繋がるのではないでしょうか。
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石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA
働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。