「ふてほど」(ドラマ『不適切にもほどがある!』の略)が大賞に選ばれた2024年のユーキャン新語・流行語大賞。数ある候補の1つに「ソフト老害」という言葉があったのはご存じでしょうか。ソフト老害とはそもそも何なのか、なぜ話題にあがったのか、背景を探りました。
「老害」とは異なる「ソフト老害」とは
2024年のユーキャン新語・流行語大賞の候補に選ばれた「ソフト老害」。出所を辿ると、元放送作家の鈴木おさむさんが、著書『仕事の辞め方』(幻冬舎)の中で自戒として提唱したことで注目された言葉だそうです。
そもそも、「老害」という言葉は年長者が自分の価値観や経験を過剰に押しつけたり、考えが硬直的だったり変化を拒んだりすることで、組織や社会の発展に悪影響を及ぼす言動に対して使われるのが一般的です。
一方、「ソフト老害」とは、「職場で年上と年下の間に立ち、バランスを保つために両者の立場や意見を汲み取ったつもりが、実はその行動が老害に見えている状態」のこと。同じ「老害」という言葉が入っているものの、単純に世代による価値観の違いや「老害」の程度の大きさを表しているわけではなく、意味合いが異なります。
むしろ、「嫌われたくない」「誰かを傷つけまい」「味方でいたい」と思うあまり、善かれと思ってやっていることが裏目に出ているとも言えます。異なる世代の間に立たされる30〜40代の中間管理職(ミドルマネージャー)がこの状況に陥りやすいようです。
例えば、部下や後輩への「みんなの言うことは正しいけど、この仕事は◯◯部長が力を入れているから、やるしかないね」「あなたの気持ちもわかるけど、うちの会社は特殊だから…」などの発言は、両者の立場を思って発言しているつもりでも、若手からは中途半端で頼りない人に映るかもしれません。
マネジメントの負担増。77.3%が「管理職になりたくない」現実
バランスを取ろうとして予期せず起こってしまう「ソフト老害」。背景の1つに、マネジメントの多様化により中間管理職の負担が増えていることが考えられます。
昨今では管理職は“罰ゲーム”化しているというニュースも見かけ、日本能率協会マネジメントセンターの調査(※1)によると、約77.3%が「管理職になりたくない」と回答。また、株式会社パーソル総合研究所の調査(※2)でも、「現在の会社で管理職になりたい」と回答した人はわずか17.2%で、若い世代では「責任が重い」「業務時間が長い」などが理由としてあがっています。
特に現代の職場では、リモートワーク/ハイブリッドワークの導入や多様な働き方への対応、ジェンダーやダイバーシティの推進といった新たな課題が加わり、これまで以上にマネジメントに求められることが増えました。
時代の変化に応じたあらゆる要望に対応しようとするなかで迷いが生じ、結果的に「ソフト老害」と言われてしまうのは悲しいことです。管理職の役割に対する現代的な再定義や、適切なサポートが不可欠と言えるでしょう。
※1:「管理職の実態に関するアンケート調査」(2023年4月)
※2:「働く10,000人の就業・成長定点調査 2024」
マネジメントの負担が増えている、3つの理由
先ほども触れたようにマネジメントの負担増の原因は多岐にわたりますが、本記事では大きく以下の3つにまとめました。
まずは、働き方の多様化への対応です。リモートワークやフレックスタイム制、副業解禁など、働き方の選択肢が広がるなか、管理職には部下の個々のニーズに合わせた柔軟なマネジメントが求められます。これにより、一律の管理が通用しなくなり、調整やコミュニケーションの負担が増加しています。
2つ目は、プレイングマネージャーの増加による業務過多です。働き方改革により、部下に残業をさせることが難しくなり、管理職自身が業務を引き受ける場面が増えています。さらに、ハラスメントへの配慮から指示やフィードバックを慎重に行う必要があるため、業務の分担がうまく進まず、結果的に自分で抱え込んでしまうケースも少なくありません。そのため、本来の管理業務に加え、自ら現場の仕事をこなすプレイングマネージャーとしての負担を強いられている状況があります。
3つ目は、世代間ギャップの調整です。まさに本記事の「ソフト老害」にも関連しますが、職場には昭和・平成・令和と働き方に対して異なる価値観を持つ世代が混在しています。中間管理職は、上司の期待と部下の意見との間で調整役を担う必要があり、世代間のギャップを埋めるためのコミュニケーションや配慮が求められます。この調整がストレスや負担を生む原因となっています。
これらの理由から、現代の中間管理職は業務の進行管理だけでなく、調和や変化への対応も担うことを余儀なくされ、負担が膨らんでいるのです。
「ソフト老害」が生まれないために。有効なサポートは?
マネジメントの知識やスキルアップを目的にした研修やワークショップなどは多くの企業がすでに取り入れていると思いますが、それだけでは管理職の現場での負担を解消できていないのが現状です。その他のサポートとしては以下のようなものが有効です。
適切な業務分担と仕組みの整備
部下に過剰な負担をかけられない中間管理職にとって、業務の効率化は重要です。役割分担の明確化や、ツール活用による業務プロセスの最適化を進めることで、管理職が「やるべきこと」と「任せるべきこと」を整理しやすくなります。
コーチングによる個別サポート
専門のコーチが管理職一人ひとりの課題や悩みに寄り添い、共に伴走するコーチングサービスも効果的です。コーチングでは、部下とのコミュニケーション方法や意思決定の仕方、ストレス管理など、個々のニーズに応じた相談が可能です。
アウトソースの活用
定型業務や繰り返し作業をアウトソースすることで、注力すべきことに集中できる環境を作ることができます。例えば、経費管理やメンバーの勤怠管理、事務作業などのルーティン作業は、切り出して外部に委託することも可能です。
キャスターでは、一般事務から経理、採用・人事、マーケティングにいたるまで、幅広い職種のアウトソーシングサービスを展開しています。管理職の疲弊を避ける有効な一手として、ぜひご活用ください。
日常業務全般:
CASTER BIZ assistant
経理:
CASTER BIZ accounting
採用:
CASTER BIZ recruiting
労務:
CASTER BIZ HR
セールスマーケ:
CASTER BIZ sales marketing
さくら もえMOE SAKURA
出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。