副業や複業など働き方が多様化するなか、異なる働き方をする人同士が混じったチームは今後増えていくでしょう。
そのようなチームで成果を出していくためには、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。
3つのポイントに絞ってお伝えします。
副業者・フリーランスとの「チームづくり」。3つのポイントとは?
近頃、副業やフリーランスなど、複数の仕事をしている人の割合が増えているように感じている人も少なくないのではないでしょうか。
株式会社ランサーズが出している「新・フリーランス実態調査2021-2022年版」によると、隙間時間に副業をしている人が約420万人、複数の仕事をしているパラレルワーカーが約350万人となっており、2022年現在の日本の就業人口である約6900万人の11.1%ほどを占めます。
この割合を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれですが、10人に1人が副業や複数の仕事をしていると考えると、一般的になりつつあると言ってもいいのかもしれません。
そのくらい副業やフリーランスとして働く人が増えてくると、チーム内にそういった働き方をしている人がいる読者も多いのではないでしょうか。実際に『Alternative Work』を運営している株式会社キャスターでも、フリーランスや副業者が活躍していますし、キャスターの社員が他の会社で副業をしているケースも少なくありません。
私も今までフリーランスや副業者の人がチームにいて、一緒に仕事をしたことがありますが、フルタイムの社員のマネジメントとはまた異なるマネジメントが必要だと感じています。
そこで今回は、副業やフリーランスなど、フルタイムで働いていない人たちと一緒にチームを作り、そこで成果を上げるために考えるべきポイントを書いていきたいと思います。
ポイント1:ドキュメントと口頭を使い分けた「情報共有」
副業やフリーランスで働く人とのチームづくりにおいて、ポイントは大きく分けて3つあります。
まず1つ目のポイントは、情報共有についてです。
副業者やフリーランスの人はフルタイムではありませんし社員でもないので、情報のキャッチアップをすることはただでさえ難しくなります。主な原因は「社員以外が見られる情報が限定されていること」「稼働時間が短くかつリアルタイムで同期コミュニケーションを取る機会が減ってしまうこと」の2つが挙げられます。
前者の情報閲覧の制限は一定仕方ない部分があるものの、やはり「得られる情報が少ない=アウトプットの精度は下がってしまう」ことに直結します。だからこそ、直接情報が見られなかったとしても、お任せしている業務について、そしてその周辺情報に関してはフルタイムの社員と同じように知ってもらうようなコミュニケーションが必要です。
後者の時間については、副業者やフリーランスの人はどうしても昼間は本業があったり他の仕事があったりするので、会議に一緒に出席して情報共有したり議論したりする時間は取りにくいです。結果的に、やはり副業やフリーランスの人の方が、フルタイムの社員に比べて持っている情報が少なくなりますし、情報の質も下がります。
では、どうすればいいか。
対策はシンプルです。
まずは、ドキュメント化を徹底することです。これは、会議で決まったことや話したこと、その過程や紆余曲折などをNotionやesa、Googleドキュメントなどのドキュメント管理ツールに残しておくことはもちろん、議論をなるべくSlackやChatwork、Teamsなどのチャットツール内で行うことです。
そうすることで、会議の場に出られなくても空いている時間にそれを確認し、後からでも情報をキャッチすることが可能になるからです。働いている時間が同じではない人がチームにいる限り、これは必須の要件になるでしょう。
また、逆説的ですがドキュメントだけに頼らないことも重要です。ドキュメントに残すことは大事ですが、それを「読んでおいて」と渡すだけだと、最新の情報をキャッチアップしている間に副業に充てられる稼働時間が終わってしまうことになります。フルタイムで働いていると気づきにくいですが、日頃フルタイムで関わっていないチームに入り、最新情報に追いつくには非常に時間を要します。ただでさえ、限られた稼働時間なのに、それなりの時間を情報収集に費やしてしまうのはもったいないですし、期待している成果を出してもらうことも難しくなります。
だからこそ、週1に30分程度でもいいので、最新情報のキャッチアップのために1on1などで口頭コミュニケーションを行うことは必要だと思います。
ポイント2:依頼業務の選定とマネジメント方法
2つ目のポイントは、依頼業務の選定とマネジメント方法についてです。
まず、依頼業務については、お任せする仕事を明確に決めること、そして稼働できる時間に合った仕事を適切に依頼することです。これができておらず、副業やフリーランスの人にフルタイムの人と同じような仕事を依頼した結果、うまく成果に結びついていないというチームの例はたくさんあります。
たとえば、週8-10時間の副業の人の場合、お任せできる業務は以下のどちらかになると思います。1つは、その時間に戦略を考えてもらったり、分析をしてもらったりなどの仕事をお任せするパターンです。こういった類の仕事は、短い時間でも集中してやってもらうことで価値を発揮してもらいやすいですし、夜中や週末の稼働でもできることなので、お願いするのに向いています。
もう1つは、1週間や2週間単位で明確なタスクを渡し、そのタスクをやってもらうことです。この場合、もし稼働時間が平日夜や土日の人であれば、チームメンバーと密にコミュニケーションを取らなくてもできるタスクをお願いした方がいいですし、逆に平日の日中に稼働している人であればチームメンバーとコミュニケーションを取りながらお任せできる仕事を依頼する、というように稼働できる時間帯によって任せるタスクは変わっていきます。
そしてこの時に大事なのは、フルタイムの社員のなかから依頼するタスクをしっかりと設計・分解した上でマネジメントできる人を置くことです。副業者やフリーランスのなかには、自分があまり知らない会社でもどんどん仕事を進めて成果に繋げてしまう人もいますが、そんな人は稀です。基本的に、フルタイムよりも得ている情報も少なくなりますから、その分成果を出すことは難しくなります。だからこそ、「スキルや経験があるから放置して大丈夫」と思わず、きちんと副業やフリーランスの人に成果を出してもらうことにコミットする責任者を置くことがポイントです。
ポイント3:同じ人間であることを忘れない
3つ目のポイントは、副業やフリーランスの人も同じ人間であることを忘れないことです。
当たり前のことを言っているように聞こえるかもしれませんが、社員とそれ以外の人に対してのコミュニケーションの取り方や態度が全く違う会社というのも少なくありません。
もちろん、副業やフリーランスとして契約するということはプロフェッショナルとして任された業務を執行し、成果を出すことが必要です。むしろ、それは前提になります。ですが、だからといって雑にコミュニケーションをとっていいわけではないですし、無下に扱ったり、契約にないことをなし崩し的にお願いするなどはルール違反です。そういったことがあれば、どんなにスキルや経験がある副業者やフリーランスであっても、その会社に対して成果でお返ししようと思うはずはありません。
発注者と受注者という関係ではありますが、それ以前に人と人です。フルタイムの社員だから、フリーランスだから、というのは働き方の違いでしかありません。
それぞれが自分の経験やスキルを活かし、働き方を選択しているだけであるという事実をまずは真摯に受け止め、お互いに尊重した態度で業務を行うことこそが、あらゆる働き方の人がチームで活躍できるようになる第一歩であると考えています。
石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA
働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。