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リファラル採用「誰に・いくら・いつ」払う?制度化の4つのポイント

2024/01/11 Thursday
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日本の労働人口の減少に加え、キャリア観の変化により、30才前後を中心に人口の流動性が高まっています。

企業としては採用に力を入れたいものの、「採用広報を頑張ってもなかなか成果が出ない」「転職エージェントに依頼するとコストが高い」などが悩みの種…。そこで、多くの企業が活用しているのが「リファラル採用」です。

本記事では、リファラル採用を単発で終わらせるのではなく、制度化して活用するためのポイントについて解説します。

リファラル採用の4つのメリット

リファラル採用とは、「従業社員に知り合いを紹介してもらい、入社してもらうこと」を指し、力を入れる企業が増えてきています。

そもそも、リファラル採用のメリットは主に4つ挙げられます。

採用コストを下げられる

1つ目は、採用コストの低減です。

一般的には、1人あたりの採用コストは転職エージェントなどの人材紹介会社を利用したときの価格が最高になることが多く、契約にもよりますが、想定年収の35%以上になるとも言われます。さらに、エンジニアなどニーズの高い職種では50%以上となるケースもあるようです。

採用コストを下げる方法として採用広報を頑張るなどもありますが、とても時間がかかります。また、必ずしも成功するわけではないので、採用コストが下がる保証はありません。

そんななか、リファラル採用であれば外部業者に依頼するよりは低価格となり、成功率も測りやすくなるでしょう。

転職市場に居ない層にも接触できる

2つ目は、新たな母集団の発掘です。

エージェントや転職サービスに登録している方は当然ながら転職を検討している層だと言えます。そのため、基本的に他社との取り合いになります。また、少なからず現状に不満を持っているともいえるため、能力面に不安がある可能性もあります。

しかし、リファラル採用では転職を今検討していない層にもリーチできます。別の会社でハイパフォーマンスを上げているポジティブかつ能力の高い人を一本釣りできる可能性があります。

ミスマッチを減らせる

3つ目は、ミスマッチの低減、つまり採用の質の向上です。

採用後のミスマッチを避けるためのアセスメントサービスはよくありますが、やはり実務・実プロジェクトを通じ、自社のスキルやカルチャーにマッチするかを測定するものに勝る手法はありません。

リファラル採用では、従業員が過去に一緒に働いたことのある人を紹介してもらうため、すでに一度協働したことがあり、「紹介しても問題ないであろう」と思われる自社にマッチした人を採用することが期待できます。

離職率を低減できる

最後は、離職率の低減です。

社内に友人がいることでエンゲージメントが高まるとする調査もあります。社内に心を許せる相手がいるだけで、不安は解消されやすくなります。一般的に、エンゲージメントの高い組織では離職率が低くなるため、多くの企業ではお金や時間を使って社員交流施策を実施しています。

そんななか、リファラル採用は既に知人関係なので、そのコストが不要となり、紹介者も含めて離職率が下がりやすくなります。また、採用後のオンボーディングや精神面のケアを紹介者が自発的に行ってくれることも期待できるため、入職者は早期に組織に馴染め、活躍が早まるのです。
 

リファラル採用を制度化する際の4つのポイント

採用のさまざまな課題を解決できる可能性があるリファラル採用。しかし、ただ従業員に紹介を呼びかけるだけでは継続的な施策にはなりません。

リファラル採用を制度化する際に重視すべきポイントは4つです。

どんな基準でどんな人を求めるのか?

リファラル採用に限らず、採用においては「組織のニーズに合致しているか」が大前提となります。特に、リファラル採用の場合は「従業員から紹介された手前、断りづらい」という感情になりやすいため、事前に明確にしておく必要があります。

自社の事業を推進するためにはどんな業務が必要となるか、そしてその業務を推進するためにはどんな行動を取れる必要があるかなどを整理しなければなりません。さらに解像度を高めるために、能力・思考パターンや経験なども整理するとよいでしょう。

誰に何のために払うのか?

基本的にリファラル採用では、入社した方・紹介した人のどちらか、あるいは両方に支援金として報酬を支払います。

入社した人に対する報酬は、入社時の祝い金のようなイメージで、外資系企業でよく見られるサインオンボーナスと考え方は類似しています。つまり、短期的なインセンティブを作ることによる入社促進が狙いです。

紹介した人(現従業員)に対して払う報酬は、採用への協力促進が狙いです。大きく、採用”成功”に対する報酬なのか、採用”活動”に対する報酬なのかに分かれます。

成功に対する対価は、読んで字のごとく「紹介した人が内定したらいくら」というものです。金額は、活動に対する対価より高めに設定するのが一般的です。

活動に対する対価は、採用に至るまでの活動に対するものです。例えば、「候補者を一人、人事に紹介したらいくら」「候補者に興味を持ってもらうために会食をすれば実費に加えいくら」のような形で支払われます。入社のいかんによらず、行為の発生ベースで支払われることが一般的です。

いくら払うのか?

3つ目は、支援金をどの程度支払うかです。法的な制約は存在しないため、「払いたいだけ払えばよい」となりますが、合理的・心情的な面での上下限は存在します。

先ほど、採用では人材紹介会社に支払う金額が最も高いという話をしました。いくらメリットがあっても、リファラル採用の支援金が外部業者を利用する場合よりも高い金額になるのは合理的ではありません。

そのため、紹介者年収の35%(程度)が上限と言えるでしょう。ただし、あまりに高額だと皆が本業を疎かにして友人を勧誘する可能性があるため、この金格よりは低めに設定する企業が一般的です。

一方、下限は、活動にかかる実費が実質の下限値となります。普段より少し良いグレードのお店に行くことも考えられるため、だいたい5000円/人の単価で2人で2回実施すると想定して2万円程度が下限として設定されます。

心理的な面も加味した水準は、その企業の賞与が参考値となります。賞与の金額差の根拠に人事評価を用いる企業は多いでしょう。例えば、B評価が50万円、A評価なら60万円…となるようなイメージです。そういった企業では「いくら採用に寄与したからといって、B評価(標準的な業績の方)が、A評価(営業の場合、ものすごく売上を上げた方)より上がるのはなぁ…」といった議論が行われるため、10万より少し値引きが行われ、5〜7万程度が納得感のある落とし所となることが多いようです。

もちろん、リファラル採用の支援金と一般的な賞与は異なるものなので、10万円を超えても問題ありません。しかし、「何となく違和感がある」ことを覆すのは非常に困難です。それでも採用への切迫感があり、高額に設定したい場合は別途理由を設けるとよいでしょう。

いつ払うのか?

最後に、支給時期です。

金額や頻度にもよりますが、都度支給の場合は賞与と合わせて年間4回を超えないように工夫しておく必要があります。年4回を超えると社会保険の算定基礎に入れる必要が生じ、再計算しなければならないからです。

そのため、「夏か冬の賞与に合算する」方法で運用をしている企業が多いように思われます。また、「入社●ヶ月経過後に在籍していた場合に支給する」と付記する企業も多いようです。従業員のモラルと平均在籍期間によりますが、あまり長すぎると管理が煩雑かつ従業員モチベーションに繋がらないので、だいたい6ヶ月を目処にする事例が多いです。試用期間や人材紹介会社の返金規定とリンクして作ると、納得感が高まるように思います。

採用の可能性を広げ、離職率低減などさまざまなメリットのあるリファラル採用。すでに導入している企業も、これから導入を考えている企業も、ぜひ4つのポイントをおさえて制度づくりをしてみてください。

人事企画に関するお悩みやご相談がある際は、以下より「CASTER BIZ recruiting」へお気軽にお問合せください。

https://recruiting.cast-er.com/form/

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山本遼RYO YAMAMOTO

株式会社キャスター「CASTER BIZ recruiting」所属コンサルタント。中小企業診断士。建設業のプライム上場企業の経営企画、大手機械メーカーでの人事制度の企画・運用や人事統括、グロース上場企業の総務人事部長などを経て、現職。従業員意識調査・制度運用状況調査などエビデンスベースでの分析を得意とする。幅広い年齢層に対する研修・講演にも多数登壇。