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BtoBマーケにおけるオンライン・オフラインの融合とタイミング

2023/05/02 Tuesday
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コロナ禍の後押しによりセミナーや展示会など多くの顧客接点がオンラインへ移行していましたが、コロナが落ち着いた今、オフライン回帰の機運も高まっています。今後、BtoBマーケティングにおいて、オンラインとオフラインはどのように組み合わせていくべきなのでしょうか。

本記事は、2023年3月16日に『Alternative Work』が主催したイベント(登壇:株式会社GiftX Co-Founder・いいたかゆうた、株式会社キャスター取締役CRO・石倉秀明)をもとに、対談記事にまとめました。

いいたかゆうた
株式会社GiftX Co-Founder。2014年株式会社ベーシックにて、マーケティングメディア『ferret』を立ち上げ、執行役員に就任。2019年株式会社ホットリンクに入社し、執行役員CMOに就任。2022年7月に「ひとの温かみを宿した進化を。」をテーマに株式会社GiftXを共同創業し、受取り手が選び直せるソーシャルギフト「GIFTFUL」運営。著書に『僕らはSNSでモノを買う』『BtoBマーケティングの基礎知識』『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』等。

石倉秀明
約800名がフルリモートワークする株式会社キャスター取締役CRO(Chief Remote work Officer)。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。妻と6歳の娘と犬と猫と暮らしている。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。

BtoBも「買うのは人」。向き合うべきは1人のユーザー

石倉:BtoBマーケティングにおいて、オンラインとオフラインそれぞれの顧客接点をどう設計するのがいいか、まずは広めのテーマからうかがえればと思ってます。

キャスターではほとんどがオンラインのマーケティングになっているんですが、同時にオフラインも大事だなと思っていて。ただ、オフラインはKPIの管理が難しいこともあって、なかなか予算に組み込みづらい面もあると思うんですよ。

いいたか:BtoBにおいては商品が高額であったりリードタイムが長かったりするので、施策の効果がすぐには見えづらいんですよね。なので、顧客接点の作り方は目的をどこに置くか次第だと思っています。

たとえば、セミナーや展示会では、名刺獲得を目的にして、そこからメルマガを配信して…といったことは皆さんやられていると思います。ただ、顧客からするともう当たり前の流れになってしまってるんですよね。

石倉:正直、飽きてしまってる感はありますよね。

いいたか:BtoBにおいても、結局買うのが人である点はtoCと変わらないと思うんです。機能面でプロダクトを比較するのが難しい時代になっているなか、イベントに来たときにどんな体験をしてもらうといいのか。展示会ではたくさんのブースがあるなかで、どうやって違いを見せるのか。本当に向き合うべきは、1人のユーザーにどう思われるべきかということになってくるんですね。

たとえば、私が展示会に参加するときは「5000人集めましょう」といった大枠の目標も一応あるんですが、それよりも「来てくれた人のうち何人が買ってくれるのか、何人が好意を持ってくれるのか」を見ています。つまり、イベント最中のKPIじゃなく、イベント後にその人たちがどうなったかの解像度を高くしています。

石倉:なるほど、そうですよね。しかも、オンラインではなくオフラインで実際に会ってその場で話すからこそできる体験がきっとある。そこからオンラインの問い合わせだったり、商談だったりに繋げるところまできちんと設計できるかどうかは、すごく大きいところですよね。

オフライン施策に踏み切るタイミングとは?

石倉:あとは、これまでリアルでやっていたことを、無理やりオンラインに持ってきすぎている感覚もあって。たとえば、オンラインイベントって、「お金を払っている企業は個別のブースを持てます」「お客さまは予約して話ができます」って、リアルの展示会とやってること同じじゃないですか。オンラインだからといって、オンラインならではでできることをやっているわけではない。

オンラインにおいては、「どうしたらカジュアルに多くの人が集まってくれるか」とか、逆に「質の高い人たちに来てもらって、どうオフラインにつなぐか」とか、そういう発想の方が実は良いのかなと思いますね。

いいたか:キャスターさんはもともとリモートワークを提唱していて、提供しているものがオンラインとイコールになるので、お客さまからしてもわかりやすいですよね。「この会社がこうやってるんだから、自分たちもできそうだな」ってイメージが湧くと思うんですけど、もちろんそうじゃない商材もある。

たとえば、前職のホットリンクだと、SNS支援サービスでも月数百万円はかかるんです。そうなったとき、さすがに顧客は瞬間的には決めづらい。ただ、逆に一度足を運ぶとすぐに受注いただけるケースもあるので、「お客さまの熱量が高い瞬間」を逃さないことが、実は重要だなと思っています。

マーケティングメディア『ferret』をやっていたときは、お客さまが料金ページを見た瞬間に私に通知が来るようにしていたんですよ。ここまではまだオンラインなんですけど、通知が来たとき、誰もいなければ僕が直接電話をかけていました。

「料金ページを見てくれている=今商品が気になっている」ユーザーということなので、すぐにコールをかけてヒアリングして、そこからまたオンラインのアポに繋げるようなやり方をしていました。オフライン・オンラインの融合においては、「どこのタイミングで何を入れるか」という考えがめちゃめちゃ重要だなと思います。

石倉:それに関連して、参加者から「BtoBマーケティングで特にオフラインに力を入れるべき企業やタイミングはありますか」という質問が来ています。こちらはいかがでしょう?

いいたか:PMF(プロダクトマーケットフィット)していない段階でオフラインに行くのは、難しいなと思います。市場認知もない状態なので。ちゃんとお客さまが幸せになる状態が見えてきて、直接的な接点を持つとうまくいきそうだというタイミング…たとえば、お話した通り一定のお客さまが成功しているとかですね。1つの参考程度ですが、そういうイメージはあります。ただ、絶対的に正しいタイミングというのは正直ないかなと思っていて、それこそ目的次第ですね。

これも正しいとは言い切れないですが、「一旦大量にリードを獲得したい」というタイミングってあるじゃないですか。1回リードが入ってこないと、どう動かすかデータを取るのも難しい。そういうときに展示会に出るのはありだと思います。

石倉:なるほど。たしかに、自分たちだけでデータを取ろうとしたら月に何百万〜何千万円のコストをかけてユーザーを集めて、何ヶ月か経って初めてわかるデータですもんね。それがオフラインで1日でできると考えたらめちゃくちゃショートカットですね。

いいたか:はい。そこから改善案をもらうこともできるので。

石倉:目の前で使ってもらってるのも見られますしね。
企業には「このタイミングを踏みます」という瞬間が何回かあると思うんですが、それまでにGoogleのリスティングやFacebookしかやっていないと、踏む手段がそれしかわからないので、それ以外については勘みたいな踏み方になっちゃうんですよね。

だから、その前にいろんな手段を試しておいて、踏めるパターンを増やしていくのは良いと思います。そう考えると、意外と世の中が思ってるより手前のタイミングでオフライン施策をテストしてみるのもありかもしれませんね。

いいたか:そうですね。目的を契約とかにしてしまうとまずいんですけど、本当にいろんな人の声が聞けるし、リアルだとデモを触ってもらうこともできる。そういう考えでやると、予算の内容も変わってくると思います。

オンラインとオフラインの融合

石倉:オフラインになったときに、対面ならではのグリップの強さとか、何かくだらない話をして、最後にはなんだか仲良くなれるような臨場感をオンラインと組み合わせて設計する――これは意外とやれていない部分ですよね。僕らも含めてですけど。

「自分たちの商品はオフラインではどんな体験をしてもらうといいのか」、逆に「オンラインではどういう人に何を提供すると、オフラインと組み合わせたときに効果的なのか」。突き詰めると、商品に対する解像度の高さが大事そうですね。

いいたか:おっしゃる通りだと思いますね。オンラインで全てを伝えることってできないですから、必ずオフラインとの掛け合わせになってくる。

企業のWebサイトって、言ってしまうとすごく勝手な意見を伝えているケースが多いんです。表面化している課題を提示して、「これが困りごとですよね」と皆さん記載していると思いますが、オフラインの良さは、顧客の課題の実際の濃度を聞きに行けること。そこの違いはあるので、コミュニケーションの取り方と、どのタイミングで何を引き出すかはやっぱりすごく重要だなと思っています。

企業って、オンラインになった瞬間にすごくすました感じのマーケティングをしがちなんですけど、いい商品なのであればもっと熱狂的に伝えていけばいいのにと思うことはありますね。

石倉:オンラインとオフラインが連動した取り組みで、面白いと思った取り組みはありますか?

いいたか:コロナになった後、知り合いのバーを借りてホットリンクで「ダークソーシャルクラブ」というイベントをやったんですよ。オンライン配信もやって、1日でハッシュタグ数百件件ぐらいUGCが出たんですね。

もちろん、SNS会社の方がその辺は得意なんですけど、見せ方次第だなと思っていて。今でこそ皆さん、ウェビナーにせよオンラインイベントにせよ、すごく綺麗な見せ方をされてるじゃないですか。それをかなり先駆けのタイミングでやったんです。「テレビとオンラインの間を取ろう」という戦略で、間にとても凝ったCMを流したりして。その後、BtoBの営業にもうまくつながりました。

石倉:それを一度やることで「ホットリンクのSNSの巻き込みがすごいらしい」という想起につながりますし、何より自分たちでやったことを事例として話せるから、とても強いですよね。

コロナ前はハッシュタグやUGC(ユーザー生成コンテンツ)が活発に生まれていたオフラインイベントやコミュニティでも、いざオンラインに移行してみると、熱量が下がったなと思っていて。オンラインだと、なかなかUGCが生まれないですよね。

いいたか:生まれないですね。そこはやっぱりリアルが強い。その場で写真が撮れたり、人に会えたりと、きっかけになる出来事がありますからね。

石倉:僕も登壇者や参加者としてイベントに参加することが多いんですが、単純に、オフラインのときのほうが面白いからみんなテンションが上がってるというのもあるんだと思います。オンラインでパソコンに向かって一生懸命喋るよりも、目の前にお客さまさんがいて、ときにはお酒飲みながら喋ったり、会話の掛け合いがなんとなく面白かったりみたいな雰囲気も含めて、オフラインイベントは登壇側も参加側もテンションが高くなりやすい。そうした熱狂を作ることが、UGCを生むポイントなのかもしれません。

マスク不要の流れになって、どこまでオフラインイベントを復活させられるのか、あるいはそんな今だからこそ設計し直すのか。それを考えるタイミングが来てるのかもしれないですね。

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※本記事は、 2023年3月16日に『Alternative Work』が主催したイベントの内容を編集して作成しています。
『Alternative Work』では、定期的イベントを開催しています。興味のある方は、ぜひお申し込みください。
https://www.alternativework.jp/event/

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ヒガキユウカYUUKA HIGAKI

フリーの編集者・ライター。求人広告制作、編集プロダクションを経て独立。主に人事・採用領域で導入事例取材、キャリアストーリー取材をしています。もう一つの専門はボカロ・バーチャルYouTuberなどのネットカルチャー。Twitter:@hi_ko1208