interview インタビュー

「信じる」から始める、働きやすい組織づくりとは【あしたのチーム】

2023/02/21 Tuesday
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リモートワークやフレックス制度、副業・複業など多様化する働き方。企業としては柔軟な働き方を取り入れたい気持ちはありつつ、同時に不安もつきもの。

今回は、『Alternative Work』を運営するキャスターのサービス「 CASTER BIZ recruiting 」を利用いただいている株式会社あしたのチームに、フルリモートワークやフルフレックスなどの働きやすさを実現できたプロセスや考え方についてうかがいました。

株式会社あしたのチーム
人事制度の構築・運用、人事クラウドまで、組織の課題に対する解決策をワンストップで提供。

・臼田大輔さん
取締役、コーポレート企画部部長。人事全般と経営企画全般を管掌。

・山本知佳さん
2022年6月入社。コーポレート企画部に所属し、人材開発、組織開発、人事企画等に従事。

CASTER BIZ recruiting
IT系企業を中心に累計500社を超える企業の採用業務を支援する採用代行サービス。採用戦略の立案から、スカウト・エージェント対応などの母集団形成、応募者対応まで一連の採用業務を請け負います。人事担当者の業務を激減させ、採用を“自動化”するサービスです。

「信じて任せる」ことから始まる組織づくり

――あしたのチームさんでは、フルリモートワークやフルフレックス制度などの働き方を導入されています。背景には、どんな思いがあるのでしょうか。

臼田:当社は、「誰もが “ワクワク” 働ける世界を創る。」をビジョンに掲げていますが、「ワクワク」は人によって異なります。

報酬のため、挑戦をするため、新しい人と出会って人間関係を広げるため…働くことのインセンティブは、人によってさまざまです。その多様性を認めることも、我々が発信しているメッセージに含まれます。

決まった場所や時間で働いてもらおうとすることでワクワクが阻害されるくらいなら、自由にした方がいいという考えで、フルリモートワークやフルフレックスなどの働き方のスタイルをとっています。

――多くの会社がその人らしくワクワク働いてほしい気持ちはありつつも、実際には自由な働き方を組織に取り入れることに不安を抱くかと思います。そのあたりはいかがでしたか?

臼田:社員の自由を受け入れることへの不安は、経営側・マネジメント側が抱くものです。リモートで離れていて「従業員を管理できるのか」「サボっていないだろうか」の不安になるのは、ある意味で性悪説的な考え方に基づいたものですよね。

当社の場合、仲間になった従業員を「信じて任せよう」と性善説的な考えが前提にあります。もちろん、勤怠管理のための最低限のチェックは行っていますが、それ以外はあまり言わないようにしています。言えば言うほど管理になってしまって、それはつまり「信じていない」ことと同義になってしまいますからね。

リモートワークは、社長・上層部が率先して推進

――現在は、人によってフルリモートワークとハイブリッドワークを使い分けているとうかがいました。いつごろからこのような働き方を導入されたのでしょうか?

臼田:もともとは、2020年のコロナ禍の最初の頃に「リモートワークしてもいいよ」という形で始まりました。初めは週に数日リモートで働く社員が出てきて、緊急事態宣言が出たことでリモートワークをやらざるを得ない状況になっていきました。

その後、緊急事態宣言は明けましたが、「これからはリモートの時代だ」と振り切ってリモートOKの態勢を継続したんです。

特に、上層部が率先してリモートワークを推進しました。当時の創業社長は「オフィス・リモートワークだ」と言って1日中会議室に入ってそこで仕事をしたり、上位役職も基本的にはオンラインで会議したりなど、上が率先している状態でした。

その状況を見て、「リモートワークをしていいんだ」という雰囲気がメンバー層にも広がり、出社する人が減っていきました。今は東京オフィスでは1日に出社する人数は5、6人ほどまで減っています。

ーー上層部が積極的に推し進め、リモートワークの浸透につながったんですね。

臼田:はい。コロナ前の状態には戻らないだろうという判断から、オフィスもかなり縮小しました。もともと、東京オフィスとしては「GINZA SIX」ビル(東京・銀座)内に座席120席、会議室10個ほどの広いオフィスを構えていましたが、出社する人数が減ったので2021年9月には同じビル内のシェアオフィス「WeWork」に移転しました。

また、フルリモートに際して「リモート手当」を支給しています。他社のリモート手当の相場は月に3~4,000円だと思いますが、当社は月に8,000円(クリエイティブ職は月に20,000円)と厚めにしています。リモートワークで働こうとすると、光熱費や通信費はもちろん会議用のWebカメラやモニター台、イヤホンなど、いろいろと備品が必要だったり、ほしくなったりしますよね。自分自身がリモートで快適に働ける環境を整えるためという意味もこめた金額です。

ーーハイブリッドワークをしている方は、どのような理由から出社されているのでしょうか?

臼田:東京オフィスはフルリモートですが、札幌・大阪・福岡・沖縄などの拠点では、オンラインではなく対面を望むお客さまも一定数いらっしゃいます。そうした拠点の社員はハイブリッドワークとし、必要に応じて出社しています。

ーーフレックスタイム制も導入されているとうかがいました。毎日10時〜15時などコアタイムが定められている会社も多いかと思いますが、あしたのチームさんでは「月の第1営業日のみ、かつ午前中のみ」。最初からこのような設定だったのでしょうか?

臼田:当初、コアタイムは月曜・火曜の9時〜14時でした。ただ、週2日のコアタイムに対して、皆が“管理されている感”みたいなものが強くなってきたんです。社員からも「何でこの時間に出なきゃいけないんですか?」「お客さまの都合で考えたら、その時間に出る必要性はないんじゃないですか?」という声も挙がり、「たしかに」と2021年10月頃からコアタイムを月1日に変更しました。

月1のコアタイムでは、キックオフやその月のトピックスを話すイベントを実施しています。それ以外は、会社として出社時間を固定するのはやめようと思ったんです。ただ、健康管理のために5時から22時という勤務時間は決めています。

ーー実際には、皆さんどのような時間帯に働いているのでしょうか?

臼田:基本的には8時半や9時に勤務スタートするメンバーが多いですが、なかには「朝型なんです」と早朝5時にスタートして昼過ぎの14時に仕事を終えるような人もいますね。

「今の課題は〇〇です」と社内に明言。ボトムアップの施策も。

――リモートワーク導入にあたり、評価制度を従来の仕組みから変えるなどはされましたか?

臼田:リモートワークメインになるにあたって、一人ひとりの職務分担をもっと明確にする必要性は感じていました。いわゆる「ジョブ型雇用」に近いものだと思いますが、「日本企業でジョブ型を取り入れるにはどうしたらいいか」というのを社内で議論したんです。そこで、2021年3月から「JD評価(ジョブディスクリプション評価)」を取り入れました。職種と等級グレードをもとに一人ひとりの職務を設定し、職務を達成するために必要な能力を5つほど定めて、その到達度で評価する項目を増やしました。

今までは成果評価とコンピテンシー評価の大きく2軸でしたが、JD評価を取り入れることによって、社員の職務遂行能力を高めたり、各人の課題を抽出して改善のための施策を実施したりできます。

――うかがっていると、大きな転換にも関わらずかなり順調に適応されていった印象です。リモート下での組織づくりにおいて、苦労した点はありませんでしたか?

臼田:実際にリモートワークを取り入れてみて、社員同士・部署同士の状況・情報収集の質が低下していくという事態が起きることは痛感しました。部署ごとの意識の掛け違いがあちこちで表面化したんです。いわゆる、セクショナリズムです。

そこでまず、全社イベントの際に「今、セクショナリズムが会社の課題です」と、オープンに表明しました。他部署のことを知らないといけないし、自ら取りにいかないと情報が得られないよ、と。

加えて、コミュニケーション改革の一環として、四半期に一度行っていた全社キックオフをフルリニューアルしました。それまでのキックオフは会社から戦略や目標、考えなどを表明する場だったのですが、リニューアル後は「互いのことを知りましょう」というのをイベントのテーマに掲げることにしました。

オンラインでの会議やイベントって、「視聴者」と「番組制作者」のようにどんどん距離が離れていってしまうのが問題で、それをどうしたら近づけられるかというのを考えました。具体的には、オープニングムービーを用意したり、司会で盛り上げたり、オンライン会議の時にニコニコ動画のように画面にコメントが流れるようなシステムを導入したり。イベントの見た目や中身を作り変えて、共通の話題が増えるようにコミュニケーション改革をしていきました。

さらに、「セクショナリズムが課題だ」というのが浸透したことで、社員発のアイデアで出たのが「シャッフルランチ」の取り組みでした。「他部署のことを知るために、もっと話す時間が必要だ」と思った社員が、他部署のメンバーとオンライン上でランチをするという取り組みを始め、月に2回のペースで行われています。

会社の“信じる”勇気が、社員のパフォーマンスに繋がる

――山本さんから見て、従業員の目線では今の働き方にどんなメリットを感じていますか。

山本:従業員目線だと、いいことばかりだと感じています。「今日は少し体調が良くないから、様子を見てから出勤しよう」「リモートが続いて運動不足だから、朝ジョギングしてから出勤しよう」など、パフォーマンスを高めるための自分なりの工夫ができるのはありがたいです。

私はこれまで経験した職場ではフル出社で、「フレックスやリモートにすると、生産性が落ちるのではないか」という経営者側の不安な気持ちもわかります。でも、社員を信じて任せた結果、パフォーマンスがいいならその方が理想的ですし、実際に自分のペースに合わせて働いて成果を出している社員がたくさんいるので、「信じて任せて、結果も出る」というのはいいことだなと思っています。会社側としては、最初に信じて任せる勇気が必要だと思いますけれど。

――「信じて任せる」について、山本さんが特に「信じてくれている」と実感したのはどんなポイントでしたか?

山本:管理されている雰囲気がないことでしょうか。それぞれの時間に何をやっていたか細かい報告を求められたり、「予定表をきちんと埋めなさい」などと言われたりしないんです。私はこれまでの経験上、逐一報告することが癖づいてたんですが、「そんなに逐一報告しなくても大丈夫だよ」と言われたほどでした(笑)。

最初はそういう管理方法にびっくりしましたが、皆が自分の役割を果たして成果を出している状況があったので、自律した組織なんだなと感じました。その代わりというか、1日の終わりに業務報告をきちんと出すという約束ごとがありますが、これも様式や文量は自由で、Slackのチャットで送る形です。

ーーマネジメント目線では、今の働き方にどのようなメリットを感じますか?

臼田:採用面に寄与しているなと感じています。候補者の方に勤務時間や福利厚生などの話をしたときに、会社の考えやスタンスが伝わって「すごく社員のことを考えている会社なんですね」「働きやすさを追求してますね」「ワクワクというキーワードに真摯に向き合われているんですね」などの言葉をいただけています。

――最後に、「こういう組織にしていきたい」という展望があれば教えてください。

臼田:冒頭に話した通り、何にワクワクするかは人それぞれです。「こうじゃなきゃいけない」というようなバイアスを取っ払い、ワクワクの定義を広げ、いろんなワクワクを許容できる会社にしていきたいと考えています。

そういう組織にするためには心理的安全性が求められますが、心理的安全性を確保するためには、まず自己開示ができる環境をつくらなければなりません。自分の自然な今の気持ちを吐露できる。互いが互いを尊重して、相手の価値観を「いいよね」「面白いよね」と認められる人たちが集まってくる。そういう状態を組織の中につくっていきたいと考えています。

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ヒガキユウカYUUKA HIGAKI

フリーの編集者・ライター。求人広告制作、編集プロダクションを経て独立。主に人事・採用領域で導入事例取材、キャリアストーリー取材をしています。もう一つの専門はボカロ・バーチャルYouTuberなどのネットカルチャー。Twitter:@hi_ko1208