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先日、金属労協は製造業の組合が要求する基本給の引き上げを、1万円以上とする基本方針を出しました。
参照記事:https://www.fnn.jp/articles/-/62633
いわゆる「ベア」、つまりベースアップで基本給の一律引き上げを労働組合が求めているということですが、昨今の物価高に合わせて賃金も上げていくべきだという流れに沿ったものです。
しかし、実は「実質賃金」は18ヶ月マイナスになっています。実質賃金というのは、額面上の賃金に対して物価上昇率を加味したもので、カンタンに言えば、物価が2%上がったときに賃金も2%上がっていたらトントン、という指標です。
つまり実質賃金がマイナスというのは、物価の上昇に対して、賃金の上昇率が低く、生活するのに使えるお金は減っているということになります。
賃上げ、賃上げとずっと叫ばれ続けていて大企業中心に賃上げされているようなニュースも見ます。ただ、実質賃金がなぜマイナスになり続けているのかといえば、シンプルに、働く人の70%以上は中小企業で働いて、その中小企業では賃金が上がっていないからです。
会社法上の定義でいうと、大企業は従業員50名以上の会社(製造業の場合だけ200名)です。つまり50名未満の会社で働いている人が70%、もっというと5名未満の小規模事業者で働いている人が約30%を占めます。
当たり前ですが、こういった企業は赤字の会社も多いですし、収益的に余裕がある会社は少ないので、賃上げできるわけがありません。そう考えると、本当に賃金を上げようと思うのであれば、企業に依頼するだけではなく「給与を上げられる余地がある会社に人が移動すること」が重要になります。
もちろんそうなると小規模事業者はやっていけないくなるわけですが、そういった小さな事業をやっていた人たちの生活をどうするか、次の収入源をどうするかという大きな論点とセットで、どうやって人を移動させるのか? を真剣に考えないといけないのかもしれません。
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※この記事は、2023年12月時点の情報をもとに執筆しております。
石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA
働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。