先日ヤマト運輸など配送会社大手5社が山間部で共同配送の実証実験を開始し、2023年にサービス開始を検討しているというニュースがでました。
参照記事:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO64491190Q2A920C2TB1000/
私の父親もトラック運転手を40年以上しているのですが、特に地方においてドライバー不足はもちろんのこと、ドライバーの高齢化は課題になっており、かなり深刻な状況になっています。人手不足はどの業界でもあり得る話ですが、物流に関しては他の業界に比べてさらに深刻です。
その理由として、他の業界は人口が減ればお客さんも減る可能性があるが、物流に関してはEC普及が進むことでむしろ仕事が増えていく傾向であり、これは今後加速することはあれど減速することはありません。
つまり顧客ニーズが増え続けるのに供給が追いつかない状態がどんどん深刻化していくということです。
もちろんロボットや自動運転の導入などによる解決も必須ですが、この人手不足と高齢化を放置すると働く人に負荷をかけ続けることになってしまうのは目に見えています。
人手不足を解決することが必要なわけですが、今回のニュースは物流業者の仕事を「アンバンドル」することで解決を考えている例だとも言えます。
アンバンドルというのは、複数の機能や役割で成り立っていたものをバラバラにして個別に提供することで、物流で言えば、「集荷」「検品」「保管」「配達」などがありますが、このうち「配達」「集荷」機能だけを切り離して、自社だけではなくその地域にあるあらゆる会社のドライバーができるようにするというのが今回の取り組みです。
これはある意味で「会社のアンバンドル」とも言えるわけですが、会社の垣根をなくすこと、そして最も負荷がかかる業務である「配達」「集荷」をどの会社でもできるように集約したことで効率が上がり、人手不足になりにくいような仕組みを模索しているように思います。
この「アンバンドル」の発想は、新しいように見えて例えばタクシーアプリなどですでに実装されています。
タクシー会社ごとに配車を頼もうとすると人手が足りなくて配車できない可能性がありますが、それを1つの配車アプリを多くのタクシーに搭載することで、配車に関しては、タクシー会社関係なくできるようになっているのはすでにみなさんもご存知の通りです。
今後、あらゆる業界で人手不足を解消するために業務や会社を「アンバンドル」すること、また特定の業務に関してはあらゆる会社が共同で行うような例はどんどん出てくるのではないでしょうか。
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石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA
働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。