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人材が流動化しないのは「中途採用」という名称が原因なのか

2022/11/16 Wednesday
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労働市場における人材の流動性が低いことは、これまでも問題視されてきました。

実際に厚生労働省が2022年9月6日に発表した「令和4年版 労働経済の分析」によれば、2021年の転職者数は約290万人となっており、前年よりも31万人減少しています。日本の労働人口は2021年現在で約6860万人とも言われていますから、転職したのは4.2%にすぎません。

労働経済の分析:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_27381.html

そんな中で経団連が「中途採用」という名前がネガティブな印象を与えるために「経験者採用」と呼び名を変えていくことを発表しました。

参照記事:https://www.asahi.com/articles/ASQC765WDQC7ULFA003.html

ただ、本当に名称変更は、労働者移動の活性化に繋がるのでしょうか? 現在、中途採用には、経験者採用もあれば、 未経験者を採用するケースもあり、今回の名称変更では多少意味合いが変わってしまいます。

本来めざすべきは「呼び方」の変更ではなく、中途採用の活発化、つまり人材の流動化のはず。人材の流動化を進めるには、新卒一括採用、終身雇用を前提とした人事制度そのものの見直しこそが本命ではないかと思うのです。

人材の流動化が進まない理由として、年功序列的な制度が続いていることは1つの要因でしょう。

具体的には、転職市場の相場と合わない 給与制度になっているなど、中途で入る人にとって魅力的でない制度になっていることもまだまだ多いと思います。例えば、DX人材はどこの会社でも欲しいわけですが、優秀なDXを進める人材は若くても年収が高い傾向にあります。外資系やITベンチャーなどに行けば1000万円以上のオファーがあることはザラです。しかし、そういった人を採用する際に「あなたは30歳なのでこの金額」というような年齢に準じるカタチで年収を決めるような会社が、まだ大企業中心に多いのではないかと思うのです。

また、経験者、即戦力が欲しいのならば、改めて募集をかけるよりも、派遣社員や契約社員を正社員転換していくなどもまず手をつけられるところですし、さらにアルムナイと呼ばれる「出戻り採用」を当たり前とするような取り組みや文化醸成も進めるべきでしょう。実際、優秀な人材が集まる会社ほど、一度退職して外でもまれ、出戻りで働くケースはよく見かけます。

また本来は新卒と中途でわけるのではなく、通年採用への移行、そしてジョブに応じた年収設定などが必要で、入社タイミングに関わらず、優秀で必要な人材が入社し、活躍できる制度や風土を作ること。そして、そういう会社にどこまで変わることができるのか? が本当の論点なのではないかと思います。

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※この記事は、2022年11月時点の情報をもとに執筆しております。

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石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA

働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。