先日ANAが週2勤務ができる制度を正式に導入すると発表しました。
参照記事:https://news.yahoo.co.jp/pickup/6450759
航空会社は副業もNG、週5日のフルタイム以外もNGというのが当たり前でした。しかし、コロナ禍で航空需要が大きく変わったことで、働き方も大きく変わったことを表す印象的な出来事でもあります。
客室乗務員にとって選択肢が増えることも大きいですが、会社にとってのメリットが大きそうです。
例えば、客室乗務員の離職率は平均よりも高いことは知られています。その理由で上位に来るのが「家に帰れない」「仕事がハード」「休みが希望通り取れない」などです。
週2日勤務ができるようになれば、上記のような離職が減ることに繋がります。
結果として採用コストや教育コストを退職によって無駄にせずに済む、というコストメリットもあります。さらに、過去客室乗務員をしていて、フルタイムだと働くのがキツイという理由で辞めた人が戻ってきやすくなり、即戦力の人材が確保しやすくなる可能性もあります。
従業員にとってはどうでしょう。もちろんメリットはありますが、デメリットもあることは間違いありません。
「働き方を柔軟に」というと、いいことのように見えますが現在の法律のもとでは弊害も出てきます。つまり、功罪はどちらもあると認識することが大事なのです。
メリットはよく語られますので、ここではデメリットを考えてみます。
例えば週2勤務だと厚生年金や雇用保険など社会保険の適用外になるので、産休や育休などを取得する際に不利になったり、将来の年金額の減少にもつながります。
また、週2勤務を選択した人はフルタイムに戻れない、その後のキャリアや働き方に制限がかかってしまう、などの制度設計だとしたら、マミートラック*と呼ばれるような状態になる人を増やすことにもなります。
*マミートラック:一度時短などの働き方をした人が、フルタイムへ復帰しても出世しにくくなったり、キャリア選択がしにくくなってしまうこと。
自由に働けることは確かにメリットに見えます。
しかし、中長期的にみて「自由に」働くことを選択した人にとって、不利にならない人事制度であることが重要です。また、「自由に働くことを選択した場合のデメリット」を理解した上で、選択できるようにすることこそ求められるのだと思います。
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※この記事は、2023年1月時点の情報をもとに執筆しております。
石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA
働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。