就活時期については、経団連と政府によって指針を示し、それに合わせて各企業が選考スケジュールを作ることになっています。現在、表向きのルールとして4年生の6月に説明会開始、10月に選考開始となっていますが、実質、形骸化しているのは周知の事実だと思います。
そんな中で、現在の大学1年生から「就活を前倒し」できるように政府が検討しているとのニュースが出ました。
参照記事:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA299VL0Z21C22A1000000/
現在の就活は、インターンも入れればだいたい3年生の5月くらいから始まり、約2年の活動期間となっています。この間、学生は定期的に就活しなければならないのはもちろん、人事もずっと採用活動を続けなければなりません。
採用活動時期が柔軟になると、ピーク時に学生は就活ばかりしてる、人事は残業が増える、ということは減るかも知れません。しかし、ある意味で大学生活はずっと就活していたり、人事も年中採用活動していくことにつながります。つまり、就活・採用がさらに長期化することになるのです。
この場合、大学は就職のための準備機関のようになってしまいます。果たして、本当にそれでいいのか? という疑問が残ります。
国としては、大学の研究成果によって助成金をいれ、研究機関・教育機関として強化することを示していますが、その方針とも矛盾します。ただでさえ、先進国の中で日本は修士や博士になる人が減少しており、修士や博士を取得しても仕事に活かせないことが課題になっているのに、それと逆行しているのではないでしょうか。
そう考えると、就活期間を前倒しして柔軟にすることよりも、本来は大学卒業後でも問題なく就職できるようにすることが大事だということになります。大学の意味をしっかり捉え直し、大学で学ぶことと、そのスキルや知識を使って社会に出ていくことは分けて考えるべきです。
「大学卒業時に就職するのが普通」で、そこからこぼれると次からのキャリアが難しくなってしまうような価値観や、キャリア観をどう変えるかに腰を据えて取り組むべきではないかと思います。
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※この記事は、2022年12月時点の情報をもとに執筆しております。
石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA
働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。