明治安田生命保険が毎年恒例の理想の上司アンケートの結果を発表しました。
男性は内村光良さん、女性は水卜アナが連続で1位に輝いていますが、興味深いのはアンケート後半にある「働く上で求めること」です。
参照記事:https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/2021/pdf/20220201_01.pdf
働く上で求めることとして「ワークライフバランス」と「お金を稼ぐこと」が上位になっており、出世したい人が15%ほどとなっています。私は、この結果を見たときに今の時代の「仕事観」を反映していると感じました。
つまり、1つの会社にずっと勤めて出世することでお金を稼ぐという考え方ではなく、「いくつかの会社を渡り歩きながら、スキルや能力を高めてお金を稼げるようになる」ことを、当たり前だと考えているということ。
言い換えれば、年功序列型のキャリアから、ジョブ型のキャリアに志向がチェンジしている証とも言えます。
先日、とある会合で10人くらいの20-30代の方と話したのですが、「退職金をもらう」とか「同じ会社にずっといると思う」と答えた人は誰一人としていませんでした。このような感覚を持つ人が、特に今の現役世代には多いのではないかと思います。
そう考えていくと、会社や上司は今までと同じ感覚でいられない、ということになります。
転職ありきでキャリアを積むことを前提に考えている人が多いということは、新入社員でもどんどん経験を積ませ、スキルを身につけさせてあげられるかが会社の競争力に繋がります。
実際に、新卒の就職先人気ランキングでも以前に比べて外資系コンサルティングファームやIT企業などの人気が上がっています。その理由として、やはり新卒であってもいきなり一定の責任を持たされ、スキルを上げていくことが求められる環境だから、という側面も強いのではないでしょうか。
以前、私が人事をしていた時も、優秀な学生ほどそういう環境か、を非常に重視している傾向が強かった覚えがあります。
今までのように若手はまずは雑務中心、年齢を重ねてから少しずつ仕事を任せていくという滅私奉公的な考え方の育成ではダメで、若手でもいきなり一定の責任を持って仕事を任せるような風土や制度にしていく必要があると考えます。
もちろん結果として、成果が出たり、能力が上がった際には年齢関係なく評価することも重要になるはずです。
その時の上司としては若手であってもしっかり仕事を任せ、その人が成長したり成果を出すことをサポートしてあげられる、という「パフォーマンスのマネジメント」ができる人であることが必要となります。
働き方は多様になり、働く時間は以前に比べて多く取れないかもしれませんが、ある意味で「質的ハードワーク」できる環境を作れるかどうかが、競争力になる時代とも言えるかもしれません。
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※この記事は、2023年2月時点の情報をもとに執筆しております。
石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA
働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。