実質賃金が過去最大のマイナス幅を記録するというニュースがありました。
参照記事:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230307/k10014000241000.html
実質賃金というのは、簡単に言えば賃金の上昇率と物価の上昇率を掛け合わせたものなので
「実感として」生活が楽になっているか、そうではないかを見るための指標とも言えます。
今回の場合は、賃金は上がっているがそれ以上に物価が上がっているので実質賃金が下がっているという結果になっています。
ここ数ヶ月は電気代が去年の2倍〜3倍になったり、生活に直結するものの物価が急に上がっている影響は大きいのではないかと思います。
また賃上げは進むといっても、物価のように毎月上げたり下げたりできるものではありません。むしろ、給与が変わるのは半年や1年に一回という制度になっている会社がほとんどのはずですから、どうしても物価が急に高騰すると実質賃金は厳しくなってしまう側面があることは確かです。
では、本当に物価高の影響だけで実質賃金が下がっていると言えるのでしょうか。
現在、厚生労働省が今月発表した有効求人倍率は1.35ほどになっています。
参照記事:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230307/k10014000241000.html
つまり、売り手市場で人手不足が続いている状態ではあります。求人倍率は都道府県によって違うのですが、実質2倍くらい求人倍率がある県のデータを見ていても、かなり売り手市場なのにも関わらず総支給給与がマイナスになっていたりします。
人手不足になれば、需要と供給のバランスを保つために賃金は上がると言われていたわけですが、実際はそんなことは起きておらず、人手は足らないけど賃金も上げられないというのがほとんどの会社や地域の現状になっています。
言うならば、人手は足らないけど給与を上げる余裕もない、というのが正直なところなのでしょう。
そう考えると、やはりやらなければいけないのは根本的なビジネスモデルの改善です。
サービス業なら値上げはもちろんだが、価格が上がっても払ってくれるような付加価値を考えること、また今までやってきたけど利益になっていないメニューやサービスの提供をやめたり、営業時間帯を短縮するなど、徹底的に生産性を上げる方向に向かうしかありません。
現状のビジネスモデルでも賃上げを行う体力のある大手こそが率先してビジネスモデルを変えていくことも必要かもしれません。
例えばコンビニやスーパーが深夜営業をやめたり、エリアによっては週末のみ締めたり、取り扱う商品を減らすなどをしても生産性が下がらないことを証明できたら、追随する会社もたくさん出てくることも予想できます。
つまり、今の時代の経営に求められるのは表面的な賃上げではありません。
利益率が上がり要請がなくても自然と賃金が上がる仕組みやビジネスモデルを再構築することこそ、企業が取り組まないといけないことになってきていると思います。
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※この記事は、2023年3月時点の情報をもとに執筆しております。
石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA
働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。