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解雇規制の見直しを整理してみる

2024/09/25 Wednesday
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今週、 Alternative Work Lab所長・石倉が気になった記事をメルマガからピックアップしてお届け。

自民党総裁選で数人の候補が言及したことで話題になっている「解雇規制」。

参照記事:https://jp.reuters.com/world/japan/SUMPML2IKJO67FKW2TOOVEJ2K4-2024-09-24/

一見すると、解雇しやすくしようというように見えますが、「解雇」と言っても実はさまざまな論点があり、今回はそれを整理してみたいと思います。

まず解雇にはおおまかに2種類存在します。会社の業績が悪化したときや経営合理化にあたって検討される会社理由の「整理解雇」。従業員の能力不足や協調性の欠如などの「普通解雇」の2つです。

実は、今回の総裁選候補者の中でもこの2つをごちゃ混ぜにして議論していたり、論点が違うところを一緒くたにして考えられていることが見受けられます。

たとえば、整理解雇を行われるには「4要件」と言われる、解雇を認めるための非常に厳しい要件があるのですが、「解雇回避努力義務の履行」という要件の見直しが提案されています。

企業の解雇回避努力義務は、文字通り、会社が可能な限り解雇を回避する努力をすべきということで、経費削減や給与の減額、配置転換などを指します。

しかし、この努力も中途半端ではダメで、過去の裁判例では「英文タイピストとして勤務してきた労働者を整理解雇した事案において、一般補助事務職への配転が可能であったことから、解雇回避努力義務を尽くしたとはいえないと判断」されたケースなどがあります。

今回のとある候補者の主張は、英文タイピストを一般補助事務職に配置転換するのではなく、企業にリスキリングや再就職支援を義務付けて、会社の「中」だけでなく「外」も範囲として、労働者が失業しないようにするべきでは?というものだったりします。言い換えれば、解雇回避努力義務ではなく失業回避努力義務を課しましょう、という主張です。

個別の政策に対して、何がいいか悪いかというのはわかりませんが、これからの時代は「解雇」という言葉に敏感に反応するのではなく、どうやったら働く人の権利が守られ、その人が継続的に活躍し続けられる社会を会社の枠を超えて作れるか、を考えていく時代になっているのではないかと思います。

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石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA

働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。