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少子化を改善するためにも賃上げは有効なのか!?

2023/05/31 Wednesday
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先日、政府が少子化対策の財源として、社会保険料の引き上げ検討を発表しました。

参照記事:https://www.fnn.jp/articles/-/533006

これは別の意味で「異次元」になってしまっていて、アクセルを踏みながらブレーキも同時に踏んでいるようなものだ、とSNSなどでも抗議の声が上がっています。

企業で考えると、設備投資などの費用は借入をしたりするが、それは将来売上を上げるためのお金であり、そのための投資であり、投資によって上がった売上から返済をします。

しかし、今回の発想は企業が設備投資するお金を捻出するのに、従業員の給与を少しずつ下げ、それを原資にしようとしているようなもの。それがいい手ではないのは一目瞭然では、と思います。

しかも、現役世代をある意味でサポートするための政策なのに、そのお金を現役世代から取ろうという発想になるのかはわかりません。見方を変えれば、お子さんがいない現役世代からお金を徴収して、お子さんがいる世帯に再配分するようなもので、その間で「格差」というか分断のようなものを作ってしまいかねません。

さらに言えば今回の決定は、負の副作用もあります。

社会保険料を上げるというのは、企業にとっても従業員を雇うときの負担が増えるということを意味します。今、賃上げを推進していますが、社会保険料は給与額に対する比率で決まります。よって、給与が上がれば上がるだけ、従業員1人当たりの企業負担額は多くなります。

これでは賃金が上がれば企業負担がどんどん増えていくことになり、賃上げ自体にストップがかかってしまう要因になりかねません。むしろ、社会保険料は比率を上げなくても、賃金が上がれば勝手に増えていきます。

だからこそ、もし社会保険料を少子化対策の財源にすることを考えているのであれば、「どれだけ働く人の賃金をあげられるか」を考えればよいことになります。

そう考えると、働く人のお給料が上がっていくというのは、社会の複数の課題をいくつか同時に解決できる手段であると言えるかもしれません。

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※この記事は、2023年5月時点の情報をもとに執筆しております。

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石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA

働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。