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果たして「異次元の少子化対策」は実現するのか

2023/01/11 Wednesday
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2023年に入り、岸田内閣より「異次元の少子化対策」を行うための検討に着手することが発表されました。それに先駆け、非正規社員や個人事業主にも子育て給付金が支払えるようにするための法案が検討されています。

参照記事:https://news.yahoo.co.jp/articles/fe54be8de3bca78e5535535ade8a9ac3b789038d

これは、育児休業明けに短時間勤務を利用する労働者や、育休を取得できない非正規労働者、自営業者などを対象に子育て支援の給付金付与を目指すものです。そして、これを実現するため、社会保険の値上げによって財源をまかなうことが検討されています。

ご存知の通り、社会保険料は企業と労働者が折半して負担しています。
つまり、社会保険の値上げは、労働者、企業ともに負担増になることを意味します。

この財源案については、本当に有効なのか検討すべき点が2つあります。

1つ目は、子育て世代の手取りが減る可能性があることです。
現役世代で収入が上がらず子どもを産むのに不安という人が多数いる中で、その当事者たちの手取りが減るようなことが果たして有効なのか、と言われると疑問が残ります。

また2つ目は、賃上げの阻害要因になり得ることです。
先述した通り、社会保険料は企業と労働者が折半して負担しています。社会保険料は給与によって変わり、給与が上がれば負担額は増えていきます。つまり賃上げを行うことは、企業の社会保険の負担が増えることを意味します。

この負担増を嫌って、賃上げを抑制したり、社会保険の適用外であるパートタイムの人を多く雇うなど、施策を取る企業の増加に繋がる可能性があります。

少子化対策で必要なのは「お金を使う優先順位を変える」ということを政府として本気で決断し、税収の中でどこにどのくらいお金を振り分けるかを考えないといけません。

つまり、少子化対策にお金をかけるということは、他に何を削るかということも同時に考えることになります。ただ、今の政策からそれは見えず、なんとか増税によって賄おうとしているような状況です。

少子化を本気で改革しようとするなら、保育園や育休だけでなく、男性の働き方や、教育や体験格差の解消、そして賃金をどうあげるか、など課題はとんでもなく広い範囲であるはずです。

それをどう解決していこうとしているか、グランドデザインが見えてないのに、先日の消費増税の発言も含め、「まず財源をどこから持ってくるか」という話から出てくるのは残念な点です。

ぜひ政府には、小手先の増税ではなく、『根本的な収益、支出構造を変える』覚悟まで持って踏み込んで欲しいと思っています。

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※この記事は、2023年1月時点の情報をもとに執筆しております。

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石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA

働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。