ライザップ社の新業態「chocozap(チョコザップ)」が注目されています。
参照記事:https://www.sankei.com/article/20221007-IKMPNNUJZ5IZFMCD6OSW7YGA2E/
ライザップ社の中期経営計画でも、ほとんどのページはこのコンビニジムchocozapについて書かれており、相当この業態には力を入れている印象です。
ライザップ社からすると、このコンビニジムは2つの側面があるように見えます。
1つはフィットネス事業全体のマーケティングにおける「ドアノック商品」としての役割です。
ドアノック商品というのは、初めてのお客さまにまず買ってもらうことを目的とした商品のこと。フィットネスジムに行ったことない人や、なかなか続かない人などに対し、安価で気軽に始められるサービスを作ることが目的です。「chocozap」は、まず「運動習慣をつけること」と「その習慣にお金を払うこと」を狙いとしているのではないかと思います。
ちなみに、これはどの業界でも顧客層を広げるマーケティング戦略の1つとしてあるものです。有名なのは、保険業界における学資保険がそれに当たります。
マーケティング用語でペイウォールといいますが、無料で体験するのと、お金を払ってもらうのでは大きな壁があり、1円でもお金を払った経験があるとその後、次のサービスでもお金をより払ってもらいやすくなると言われています。
よって、コンビニジムをドアノック商品としてまず始めてもらうことで、ライザップへの会員転換も期待しているのだと思います。
2つ目がビジネスモデル転換のテスト的役割です。
ここ数年旧来のライザップ社は主力事業「ライザップ」の店舗数をまったく増やしておらず、かつ以前のように短期集中ではなくサブスク型のプランへの切り替え、利益が安定的に出るビジネスモデルに転向しようとしています。
ただライザップだとどうしても設備や場所に加え、トレーナーなどの固定費が重いビジネスになってしまいます。それに対し、コンビニジム「chocozap」は、設備費や家賃も安く、かつテクノロジーで人件費も最小限にすることができます。「chocozap」が成長するかどうかは、今後のライザップにおいて非常に重要だと思われます。
これがうまくいけば、低コストで安定的な収益をあげられるビジネス構造に変わるので、その中心的な役割としてコンビニジムに力を入れて、投資していると考えられるのです。
ライザップが出てきた時も、印象的なCM展開などマーケティングが非常に上手なのが印象的でした。今回の取り組みを見ても、やはりマーケティングと事業開発がとても上手な会社であることは健在だと感じる事例でした。
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※この記事は、2022年11月時点の情報をもとに執筆しております。
石倉 秀明HIDEAKI ISHIKURA
働き方に関する調査・分析・研究を行うAlternative Work Lab所長。慶應義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程在籍。『Live News α』(フジテレビ系列)、『ABEMAヒルズ』(ABEMA)コメンテーターや『ダイヤモンド・オンライン』での連載、書籍執筆などの活動も行う。著書に『会社には行かない』『コミュ力なんていらない』『THE FORMAT』等。