column ニュース・コラム

【最新】2025年の「働き方・キャリア」トレンド&キーワードまとめ

2025/01/09 Thursday
この記事をシェア: xシェア

「2025年問題」がついに本番。労働力人口の減少により、これまで以上に人材確保が難しくなることに加え、後継者不足などの問題も懸念されています。2035年の労働力不足は2023年の1.85倍に達するという調査(※1)も。経営層や人事部門に関係の深い「働き方・キャリア」のトレンドを、キーワードで整理しました。
※1:パーソル総合研究所「労働市場の未来推計2035

ついに東京都も導入!週休3日制

東京都が、2025年度からフレックスタイム制を活用した「選択的週休3日制」の導入を発表しました。1ヶ月に必要な総労働時間はそのまま、勤務日の労働時間を延ばすことで、土日のほかにもう1日、休暇を取れる制度です。

子育てや介護だけでなく、自分が望むライフスタイルやリスキリングなど、さまざまな目的で使うことができます。もちろん、1日の勤務時間が伸びる、メンバーとの連携に工夫が必要になるなど、気にすべきポイントもあります。

自治体では東京都のほか、茨城県や千葉県などがすでに導入しています。労働力人口が減るなか、柔軟な労働環境を整えることで職場としての魅力を高めようという狙いが見られます。一方で、群馬県前橋市は試行の結果、週休3日制の導入を見送りました。自治体によって、判断が分かれているようです。

週休3日制に限らず、リモートワークやフレックスタイム制など柔軟な働き方の選択肢はさまざまです。

ニトリ、カルビーも。シニア人材の活用に注目

少子高齢化、労働力人口の減少により、働き続ける高齢者(シニア)が一般的になってきました。厚生労働省の調査(※2)では、65~69歳の就業率は52.0%と半数を超え、70〜74歳も34.0%に達しています。

大手企業も、即戦力を確保するべく、シニア活用に注力しています。例えば、ニトリでは再雇用の年齢上限を70歳とし、給与を最大で定年前の9割ほどまで引き上げました。カルビーも、高い専門性などが認められる場合、65歳を超えても嘱託社員として働けるように制度を変更。さらに、給与を定年時とほぼ同じ水準にまで引き上げました。

企業は、再雇用の制度を整えたうえで、シニア人材のモチベーションをうまく維持しながら労働力として活用することが、経営戦略の1つとなりそうです。再雇用は、定年前よりも大幅に待遇が下がり、業務内容も軽微なものになる印象がありました。しかし、このイメージも変化していくのかもしれません。

※2:厚生労働省「労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)平均結果の概要」表Ⅰ-4 年齢階級別就業率の推移

出社?リモート?ハイブリッド? 議論は続く

オフィスへ出社するか、リモートワークか、ハイブリッドか、2025年も各社で選択は異なり、議論が続きそうです。

コロナ禍以降、GoogleやAmazonなどのメガテック企業が従業員に「週3日以上のオフィス勤務」を求めたことは大きなニュースになりました。また、日本でも2024年12月、「フルリモートOK」としていたLINEヤフーが「原則週1回出社」へと制度変更したことが話題に。コロナ禍からリモートワークを積極活用してきた企業でも、週に数回の出社義務への変更が見られます。

しかし、労働力人口が減少するなか、リモートワークは全国から優秀な人材を採用できるというという点で引き続きメリットが大きいのも事実です。

オフィス勤務とリモートワークにはそれぞれ違った目的やメリットがあります。経営者やマネージャーは、自社の業務やカルチャー、求人状況を鑑みて、働きやすい環境を整えていきたいところです。

過半数が後継者不足…事業承継は「内部昇格」がメジャーに

中小企業を中心に、後継者不足が深刻になっています。東京商工リサーチの調査(※3)によると、経営者の平均年齢は63.76歳と過去最高を更新。また帝国データバンクの調査(※4)によると、「後継者不在率」は52.1%となりました。年代別では50代では60.4%、60代では37.8%でした。親族や社内に良い後継者候補が見当たらず、承継に頭を悩ませている経営者は少なくありません。
事業承継には、「同族承継」「内部昇格」「M&A」「外部招聘」などの方法があります。同族承継の割合は5年連続で減っており、2024年の速報値では、内部昇格が36.4%と、同族承継の32.2%を初めて上回りました(※4)。

事業承継はどの方法を取ってもメリット・デメリットがあります。いずれにしても、短期間の調整で円滑に事業承継するのは、至難の業。後継者不在をきっかけに倒産・廃業したり、取引先への債務不履行が起きたり、社員のモチベーション離脱を招いたりするリスクがあります。経営者が高齢の場合は、喫緊の課題として取り組む必要があるでしょう。

※3:東京商工リサーチ「全国社長の年齢調査」(2023年)
※4:帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2024年)

賃上げの波も。大企業と中小の格差広がる

物価高に合わせた賃上げが、日本中のホットワードになっています。2024年10月の改定では、最低賃金の全国加重平均額が1055円に(※5)。アンケート調査によれば、84.2%の企業が2024年度に賃上げを実施または実施予定(※6)です。

ただし、大企業と中小企業の格差が広がっていることも見て取れます。2024年の春闘における大手企業の賃上げ率は5.58%と、33年ぶりの高い水準でしたが、中小企業では3.62%にとどまりました(※7)。

2025年も、大企業を中心とした賃上げの流れは続きそうです。例えば、サントリーホールディングスは2025年春にベースアップ(ベア)を含む7%の賃上げを、星野リゾートは2025年1月から平均5.5%の賃上げを実施予定。ノジマは月1万円のベースアップや現場手当を新設すると発表。2025年度の大卒新入社員の初任給は、家電量販業界トップクラスの30万円となる予定です。

経営者は、競合他社に先駆けて賃上げを打ち出したり、ベースアップの幅を引き上げたりすることで、人材確保につなげることができるでしょう。ブランディングの観点からも、賃上げは有力な手段となります。

※5:厚生労働省「令和6年度地域別最低賃金改定状況
※6:東京商工リサーチ「2024年度「賃上げに関するアンケート」調査
※7:日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業の賃金改定に関する調査

一般化が進む「副業」、時間管理のルール変更も

2018年頃から、政府が後押しし始めた副業・兼業。2020年9月には、副業・兼業にまつわるルールを明確にするべく、国がガイドラインを設定しました。安心して副業できるよう、環境整備が進んできたといえるでしょう。

ただし、仕事をしている人のうち、副業をしている人の割合は6.0%にとどまっている(※8)のが現状です。国は、企業が社員の副業を認めるためのハードルを下げるべく、ルールの見直しを検討しています。

例えば、「副業先も含めた労働時間全体を、本業の会社が管理する必要をなくす(月単位の総労働時間を把握するのみへ簡素化)」「競合他社での副業を認める範囲も指針で明示する」といった内容です。

現在は、本業に加えて他社でも雇用される「雇用型副業」の場合、本業と副業を合わせた労働時間が1日8時間・週40時間を超えると割増賃金を払うルールになっています。しかし副業先も含めた労働時間の明確な管理は難しく、企業側の負担が大きいため、副業を促進しにくい原因になっていました。

より自分の実力を発揮したいと考える人は、副業や兼業を認める職場へ移っていくのは自然な流れです。人材確保やスキルアップの観点からも、副業の流れは止まりそうにありません。

※8:労働政策研究・研修機構「副業者の就労に関する調査

103万円の壁は「123万円の壁」に

2024年に大きな注目を集めた「103万円の壁」問題。年収が103万円を超えると所得税などが発生し実質的な手取り額が減ってしまうこと、配偶者控除や扶養控除に影響が生じることから、「壁」と呼ばれています。

この壁に関係するのは、主にシフト制のパートやアルバイトなど非正規雇用で働く人と、その雇用主。年収が103万円を超えないように労働時間を調整する、いわゆる“働き控え”をする人は珍しくなく、繁忙期に人手を確保できない職場も見られます。

103万円という金額は、1995年に設定されて以降30年近く変わっていません。近年の物価上昇や賃上げ、とくに最低賃金の引き上げに対応できていないことから、変更が求められてきました。実際、帝国データバンクの調査(※9)によると、89.7%もの企業が103万円の壁の見直しを求めていました。

結果、2024年には「103万円」の金額を見直すよう議論が進み、2025年度の所得から「123万円」に引き上げられることとなりました。企業の経営者は、103万円が123万円などに引き上げられる分、労働力を確保できるようになります。既存のスタッフの労働時間を増やせるので、新しいスタッフを雇ったり教育したりするコストを抑えつつ、人手を確保できるのは大きなメリットです。

一方で、スタッフの稼働時間を増やす場合、人件費の負担増が見込まれます。また、人事労務上の変更が生じるため、人事部門では控除関係の確認などの一時的な事務作業が増える可能性があります。企業の人事担当者は、必要な対応について注視する必要があるでしょう。

※9:帝国データバンク「「103万円の壁」引き上げに対する企業アンケート

以上、2025年の「働き方・キャリア」トレンド&キーワードについてまとめてお伝えしました。
自社の現状を把握し、対応の方法などを検討しておくといいでしょう。

『Alternative Work』では、定期的にメルマガを配信中!ニュース、時事ネタから仕事のヒントが見つかる情報まで幅広くお届けします。ぜひ、ご登録ください。
登録はこちら

この記事をシェア: xシェア

さくら もえMOE SAKURA

出版社の広告ディレクターとして働きながら、パラレルキャリアとしてWeb媒体の編集・記事のライティングを手掛ける。主なテーマは「働き方、キャリア、ライフスタイル、ジェンダー」。趣味はJリーグ観戦と美術館めぐり。仙台の街と人、「男はつらいよ」シリーズが大好き。ずんだもちときりたんぽをこよなく愛する。